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真夏の大災害、熊本を襲う"二重の脅威" 暑さが阻む救助・避難の最前線 避難所が「サウナ化」車中泊も「ガソリン不足」
07/30 22:00 配信
今回の震災の最大の特徴は"真夏の大災害"
熊本の被災地では地震そのものへの対応に加え、もう一つの深刻な脅威が立ちはだかっています。それが、猛烈な夏の暑さです。
停電、断水、そして体育館での避難生活。これらが重なる中、停電状態が続くと、熱中症患者数が大きく増えるおそれがあります。今回の震災の最大の特徴である、"真夏の大災害"という点について、元大阪市消防局救助隊員の兼平豪氏の解説です。
「今回は…真夏の大災害」――過去の震災と何が違うのか?
阪神・淡路大震災(1995年1月17日)、東日本大震災(2011年3月11日)、熊本地震(2016年4月14日・16日)、能登半島地震(2024年1月1日)。震度7クラスの巨大地震を振り返ると、その多くが冬から春にかけての発災でした。
真夏に発生した大規模地震は、それほど多くありません。今回の熊本地震が際立っているのはまさにその点であり、兼平氏は「停電と断水が同時に起きているため、熱中症と脱水症状の患者数がかなり大きく増えるおそれがある」と分析します。
被災者は次なる地震への備えと、暑さ対策の両方を求められます。この"二重の重荷"が、今回の災害対応をいっそう困難なものにしています。
9450人が避難、しかし避難所は「安全確認」が取れていない
避難したくても、避難できない現状
30日午後2時時点で、熊本県内の避難者数は9450人に上ります。震度7が観測された氷川町では、発生当日に停電が発生し、屋内での安全確保が難しいと判断された結果、237人が小中学校のグラウンドで車中泊を余儀なくされました。
さらに注目すべき数字があります。午後3時時点で、熊本県内45の市町村のうち18の市町村で避難所が開設されていないということです。避難したくても、避難できない地域が熊本県内に多く存在しているのです。
なぜ、避難所を開設できないのか。兼平氏はその背景を次のように説明します。「避難所を運営している方々も被災者です。自身の安全確保だったり、避難所として指定されている建物が今、本当に安全なのかという確認が取れていないのが実態」。全国の自治体から職員の派遣が進んでいますが、安全確認が整うまでには時間を要するのです。
避難所に辿り着いても「サウナ化」が進む
エアコンがない避難所は「サウナ」
仮に避難所に入れたとしても、そこが安全な場所になるとは限りません。熊本県宇城市では、エアコンが故障し窓を開けたまま一晩を過ごした避難所がありました。29日の熊本市の最高気温は35.1℃を記録しており、実態は熱風が吹き込む状態だったと考えられます。
そもそも、避難所に指定されている公立小中学校の体育館における冷房設置率は、全国平均で23.7%(2025年5月時点)に過ぎません。熊本県ではさらに低く、12.9%にとどまります。冷房設備が整っていない体育館の方が、圧倒的に多いのです。
しかもその限られた冷房設備も、停電の影響で使用できない状況にあります。現時点で約1万4340戸が停電中であり、小泉防衛大臣によると、避難所にスポットクーラー約300台が輸送されましたが、避難者全体をカバーするには十分ではありません。
兼平氏は避難所の現状を「夏の大災害だと、避難所自体がサウナ化が進んでいく」と指摘します。人が集まれば集まるほど、室温はさらに上昇します。
断水8万戸、プライバシーと衛生の危機が重なる
断水の影響を受けているのは約8万戸に及びます。自衛隊による給水は延べ2万人を超えていますが(29日午後5時時点)、いつ水が届くか見通せない状況が避難者の心身を追い詰めています。
兼平氏が特に懸念を示したのが、水分補給の問題です。「夏の大災害では1時間に100ミリぐらいの水分補給が必要」と指摘した上で、「水の支給の見通しが立たないと、我慢してしまう。これが脱水症状を招き、同じ環境での車中泊と重なると、エコノミークラス症候群の危険性が普段より大幅に高まる」と警告します。
加えて、「トイレに行きたくないから水を飲むのをやめておこう」という心理が働く懸念も示されました。仮設トイレは夏場に内部が高温になりやすく、利用そのものが熱中症リスクになりかねない、という悪循環も生じるということです。
衛生・感染面のリスクも夏特有の問題として浮かび上がります。兼平氏によると「冬の災害と大きく違う点として、排泄物やゴミの腐敗速度が大幅に変わってくる」ということで、感染症対策が、今後の避難所運営における重要課題になります。
プライバシーの問題も深刻です。「夏場は薄着のため、プライバシーの配慮ができていないと性被害の危険性がある」と兼平氏は言います。パーテーションを設置すれば風通しが悪化し、さらなる室温上昇につながる。睡眠障害や心身のストレスが慢性化する恐れもあります。
車中泊という選択、しかしガソリンが底をつく
ガソリン不足も深刻な課題に
避難所を避けて車中泊を選ぶ人も少なくありません。前日、熊本県宇城市の駐車場では多くの避難者が車内で夜を過ごしました。
しかし、ここでも新たな問題が顕在化しています。熊本市内ではガソリン不足が深刻化しており、ある給油スタッフによれば「1日分が2時間で出てしまった」という状況です。ガソリンは発災直後、人命救助に当たる緊急車両が最優先で使用されるため、一般車両への供給は制限されます。
ガソリンがなければ、冷房も使えない。車中泊でありながら、窓を開けざるを得ません。それでも兼平氏は「窓は必ず開けるようにしてほしい」とし、閉め切った空間での熱中症リスクは「大幅に増えるだろう」と注意を呼びかけました。
こうした状況を踏まえ、兼平氏は広域避難という選択肢も提示します。能登半島地震の教訓としても示されたように、「その場にとどまるより、より安全な町に移動することが選択肢の一つ」だといいます。ガソリンがあって移動できる方は、広域避難を検討することが現実的な対応策になり得ます。
救助隊員も熱中症と闘いながら――「1時間で倒れた経験がある」
猛暑は救助する側にもリスクに
被災者だけでなく、救助する側にも暑さは容赦なく牙を剥きます。イオンモール熊本では、重機などを用いた建物入口付近の瓦礫撤去作業が始まりました。ただし、コンクリートの瓦礫の下は高温多湿の環境になっており、救助を求める人にとっても過酷な状況が続いています。救助を求める人が"脱水症状"に陥る懸念もあります。
兼平氏は救助現場の過酷さを自身の経験を交えて語りました。「実際に救助現場に行って、1時間の救助活動でも熱中症で倒れたことがある」。今、被災地で活動している救助隊員たちは、夜通し寝ずに、高温多湿の環境下に踏み込み、さらに余震のリスクと隣り合わせで作業を続けています。
「爆発によって崩壊リスクもある。ガスの滞留の危険もある。重機を入れられず、人の手で救うしか選択肢がない場面が続いている」と兼平氏は指摘します。緊急脱出の準備をしながら、人命救助を続けるという過酷な条件が重なっているのです。
プッシュ型支援の展開と「熱中症を起こさない環境」の確保が鍵
被災地への対応は
こうした状況を受け、現地からの要請を待たずに支援を届ける「プッシュ型支援」が展開されています。食料・水の供給、電源車の派遣、簡易クーラーの輸送などが含まれます。
熊本市の予想最高気温は今後数日にわたり35℃以上が見込まれており、暑さの脅威は増すばかりです。「これから先は特に、熱中症を起こさない環境をどれだけ用意できるかが鍵」という認識が、対応の中心に据えられています。
終わりの見えない状況の中で
元大阪市消防局・救助隊員の兼平豪さん
停電がいつ復旧するか分からない。水がいつ届くか分からない。そうした「先が見通せない状況」が、10年前の熊本地震を経験した方を含む多くの被災者の心理的負担をさらに重くしています。
兼平氏は「明日は必ず来ます、と言われれば心的な拠り所にはなるが、それが見えないと苦しい」と述べました。
今回の熊本地震は、地震そのものへの対応と、真夏の環境が生み出す複合的なリスクとを同時に乗り越えなければならない、極めて困難な局面にあります。救助活動の継続、避難所の環境整備、広域避難の促進、そして衛生・感染対策。これらを並行して進める体制をどこまで速やかに構築できるか、今後の対応が問われています。
(『newsおかえり』7月30日放送分より)
最終更新:07/30 22:00


