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戦争の恐ろしさは「戦場だけではない」 日本人監督が描く兵士の”心の傷”
09/12 20:00 配信
戦争の恐ろしさは生死だけではない、家族や周りにも連鎖する“戦争トラウマ”。
映画の指揮を執った監督に岩本計介アナウンサーが独占インタビュー。また、戦争トラウマの被害者にも話を聞きました。
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日本人監督が描く“心の傷” ベトナム帰還兵の実話をもとにした映画が公開
11日に公開された映画「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」。ベトナム戦争に従軍した米兵の実体験を基にした物語。帰還兵が心に傷を負い、もがきながら日常を生きる姿を描いたものです。
メガホンを取ったのは塚本晋也監督です。現在、イタリアで開催されているベネチア国際映画祭。会場ではスタンディングオベーションもありました。(※日本映画初の「金の小獅子賞」受賞)
11日、大阪の映画館ではー
映画を見た人
「(Q.映画を見て思いを馳せることは?)こんな衝撃やと思ってなかった。なんか怖いというか、主人公の人がここまでしゃべったこと自体がすごいなと思いました」
「(私は戦争の話を)学校とかの教育で聞けたりしたが、今は戦前に生きていた方が高齢で亡くなってきている中で、そういった点では若い人とか自分たちと年齢が近しい人たちに見てほしい」
戦争の恐ろしさは「戦場だけではない」 監督が描きたかったもの
監督に映画の狙いを聞きました
映画のテーマは「戦争での心の傷」。監督に狙いを聞きました。
岩本計介アナ
「今回の作品は加害者の目線であるということが際立っていたと感じたんですが」
塚本監督
「戦争の恐ろしさっていうのは(被害者の目線)そこだけじゃないというのがずっと前からあって、そう思ってたところに、(元海兵隊の)アレンさんの戦場での加虐体験を包み隠さず書いてある小説、ノンフィクションが飛び込んできて、これがまさに描きたかったことだと思い立ちました」
塚本晋也監督
戦争の恐ろしさは戦場にあるだけではないということを肌で感じて欲しいと監督は話します。
塚本監督
「戦争自体が終わって幸いにも戦場で死なないで帰ってきたからいいかっていうとそういうわけじゃなくて、帰ってきても恐ろしいことは続き、それが周りにも連鎖し、世代にも連鎖していく。こうやって連鎖していくということが分かってきた。そのことを感じてもらいたい」
映画のモデルとなったアレン・ネルソンさん(61歳で死去)
岩本アナ
「私が映画を見て苦しかったと感じた要素の1つに『家族に連鎖してしまう』ということがありました」
塚本監督
「自分たちの知らない感情が湧き出てきて、どうしても止められない感情で、家族に奥さんとか子どもに暴力を振るっちゃうってことがあるみたいなんですね、その暴力が次の世代にも連鎖していく。それが本当に恐ろしい」
映画のモデルとなったのはアレン・ネルソンさん。自身の体験をもとに、日本でも戦争の現実を訴え続けましたが、2009年に病気で亡くなりました。
戦争経験で「父が壊れた」 子どもの頃のできごとがトラウマに…
父が日本兵だった藤岡美千代さん
ネルソンさんの話を知り、他人事ではないと話す女性がいます。大阪市内で喫茶店を営む藤岡美千代さん。父親が元日本兵でした。
藤岡さん
「私が覚えてる父っていうのが、(お酒の)一升瓶をコップで『があー』って飲んでいるというその飲み方も、もう尋常じゃない。1回飲みだしたらもう1本空にしないと気が済まないという」
そんな父親との生活。自分が生き延びるのに必死だったそうです。
藤岡さん
「夜中にガバッとバネのように起き出して、子どもの布団をにらみつけて上布団を剥いで、兄を捕まえて土壁に投げたりとか、ふすまに投げたりとか。私なんか『次は私だ』と思うと、父の足の裏がここに見えた瞬間にゴロゴロって畳を転がって逃げる。そういうのが毎日ではなかったですけど、本当にいつ起きるかわからない」
兄や自分に対して暴力を振るってきたかと思ったら、怯えだす時もー
藤岡さん
「もう『バー』って雨が降ると、すごく怯えて泣いて『あいつが殺しに来る』って部屋の片隅で固まっている。『うわー』って。『ザッザッザッザ』という『兵隊の足音が聞こえる』って非常に怯えていた」
さらにはこんなこともー
藤岡さん
「子ども2人を窓際に立たせてピシッと『お父ちゃんと死ぬんだ、みんなで死ぬんだ』って言って、プロパンガスの栓をひねって、『シー』ってプロパンガスが流れてくるんですよ。それを母が『死ぬんだったら、お前だけ死ね』と言ってガスの栓を止める」
こうした子どもの頃の出来事は、藤岡さんの中にトラウマとして残り続けています。
藤岡さん
「駅前で流行ったミストとかの音が、もう自分にとってすごいフラッシュバックで『お父ちゃんがガスの栓ひねった』って」
過酷な環境を必死で生き抜いてきた藤岡さん。唯一残っている父親の写真を見ることができないといいます。
父の一連の行動が“戦争トラウマ”が原因と知った藤岡さんは…
岩本アナ
「お父様の一連の行動が、いわゆる“戦争トラウマ”からくるものだと知ったのはいつ頃でしたか」
藤岡さん
「私はたまたま小さなチラシに戦争PTSDの家族会というのをやってる人がいます、みたいなのを読んだので、ひょっとしてこれうちのことかなと。お父ちゃんのことか、私のことかもしれないな」
それまで「自分の家だけの問題」だと思っていたことは、戦争が原因だったことを知り、父親を理解しようとしてきたといいます。
それでも藤岡さんはー
藤岡さん
「私は『一生父を許してはいけない』と今では本当に思っています。父が参加してきた戦争を『あれは戦争だったからしかたがない』とは思えない。戦争はダメです。父がああいう目に遭って心を壊した。父が悪くはないと言うけど、でも父が暴力をしたわけで。だから父の暴力を許さないということは、あの戦争も私は絶対許さないっていうところに繋がっているので、その父を理解することと、父を許すというのは別次元なんです」
岩本アナ
「教育の場で子どもたちに戦争はダメだと、どう伝えますか」
藤岡さん
「まず『イジメをやめよう』と言う。自分が痛い思いをした、『どうしたの?』って声をかけられるとうれしいじゃないですか。『痛い』って言って『うわー』とやられたら、苦しいじゃないですか。そういうところから、人間は痛みを知る。自分がされて嫌なことをしないという、そういうところからスタートして、子どもたちに教えていくっていうのはものすごく大事」
“戦争トラウマ”は「家庭の問題だと思われていた」
朝日新聞横浜総局・後藤遼太デスク
この問題が埋もれてきた理由について、長年取材してきた朝日新聞の後藤遼太デスクは、「当事者たちは家庭の問題だと思っていたため、社会での連帯ができていなかった」と語ります。
後藤デスクが取材を始めたきっかけも、藤岡さんの講演でした。震える声で「今でも怖くて、お父ちゃんの写真が見られない」と語る藤岡さんの姿を見て、「この人の中では、戦争はまだ終わっていない。現在進行形の社会問題だ」と確信したといいます。
世界では今もさまざまな紛争が続いており、戦場に行ったことのない家族が、帰還した兵士のトラウマによって傷つけられているということが起きているかもしれません。
映画「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」は、大阪・兵庫でも公開中です。
(「newsおかえり」2026年9月11日放送分より)
最終更新:09/13 13:02


