関西ニュースKANSAI
「言葉が人を殺す」 SNSでの誹謗中傷の怖さ “山火事みたいな”デマ拡散・“マチアプなりすまし”でDM殺到 被害者が証言
10/06 12:00 配信
深刻化するSNS上での誹謗中傷。裁判で勝っても、得られる賠償金はわずかといったケースが相次いでいます。
ABCテレビの岩本計介アナウンサーが、被害にあった2人を直接取材。証言とともに、直面する“壁”に迫りました。
「山火事みたいに」広がったデマ 大阪・北新地のママが受けた誹謗中傷
SNSで誹謗中傷を受けた藤崎まり子さん
SNSで誹謗中傷を受けた藤崎まり子さん
「『殺す』とか『死ね』とか、『水商売の舌が何枚もある女め!』みたいな」
大阪・北新地のママ、藤崎さん。6年前のある日、大量の誹謗中傷メッセージが突然送られてきました。
藤崎さん
「今まで生きてきて、人に『死ね』って言われたり『殺す』って言われたことなんて、普通に生きてたらないと思うんですけど、それが毎日のように言われて。(Q.人と目を合わせるのが怖くなる?)私が死んだら迷惑かからないのかなとか、それくらいまで追い詰められて」
SNSでデマが拡散「山火事みたいに…」
きっかけは、藤崎さんに全く関係のない出来事でした。
2020年、タレントの志村けんさんが新型コロナウイルスに感染し、死去しました。感染症によって日常が一変し、不安が広がる社会に、さらなる衝撃を与えた人気タレントの訃報。
SNSにはー
「コロナに感染している藤崎ママが銀座で志村さんの誕生パーティに参加して感染させた」
「志村けんにコロナうつしたの、まりこママだよ~」
書き込まれていたのは、全く身に覚えのない“デマ”でした。
藤崎さん
「志村さんにお会いしたこともない。でもそれが事実として一人歩きというか、一人歩きじゃなくて暴走ですよね。いくら訂正しても画面の向こうの人は信じてくれなくて。“~らしい”が“~に違いない”に変わって確信になって、そうなると山火事みたいですよね」
藤崎さんはSNSで自らデマを否定する発信をしましたが、一度ネット上に広まった誤情報は拡散され続け、誹謗中傷のメッセージが止むことはありませんでした。
勝訴や和解で裁判は決着も…賠償は1人あたり10数万円ほど
2023年、藤崎さんはSNSへデマの投稿をした26人に損害賠償を求めて提訴しました。
勝訴や和解で裁判は決着しましたが、賠償は1人あたり10数万円ほどだったといいます。
藤崎さん
「弁護士費用で(賠償金を得ても)マイナスになることは目に見えてたんですよ。でも問題として自分が手を挙げられたらなと」
岩本アナ
「訴えた人がもっと保護されるべきという(国の)動きに関しては、どのような思いですか」
藤崎さん
「すごくありがたいですし、これから傷つく人が減ってくれたら私も無駄じゃなかったなって思います」
こうした被害に対して損害賠償額が低すぎるという指摘があるなか、政府は9月30日、損害賠償額の引き上げなどについて、有識者を交えた議論を始めました。
元交際相手の妻によるマッチングアプリ“なりすまし” 約529万円の賠償確定も「支払いゼロ」
中傷被害に遭った平尾曜子さん
一方で、大きな賠償額が認められたとしても、報われない現実もあります。
中傷被害に遭った平尾曜子さん
「踏み倒されて、泣き寝入りするしかないっていう感じなので」
佐賀県に住む平尾曜子さん。いまから5年半前の2021年2月、マッチングアプリ上で平尾さんになりすましたアカウントが作られ、性的な関係を求める募集の投稿がされていました。
平尾さん
「自分本人と信じてしまった男性たちから約2日間で400件以上、そういう関係を求める連絡が届きました」
なりすましていた人物は元交際相手の妻
弁護士が開示請求をするなどして、2年をかけてなりすました人物を特定。それは意外な人物でした。
平尾さん
「私の15年以上前の元カレの現在の妻が被告でした。その方は全く面識がない方でした」
平尾さんの体にも異変は起きていました。
平尾さん
「被害に遭ってから、最初は不眠症状とか気分の落ち込み。ショックで一気に(不眠症が)過眠症に切り替わって、道路で急に寝てしまうとか、仕事中もいきなり話している間にも、ガクッと寝てしまう症状が出始めて、突発的にも首つり未遂、自殺未遂をしたこともあります」
重度のうつ病などになった平尾さん。今も治療を続けているといいます。
約529万円の賠償確定も「支払いゼロ」
ようやく迎えた裁判で、元交際相手の妻は「SNSに投稿したことは覚えていません」と述べました。
今年7月、損害賠償金約529万円を平尾さんに支払う判決が出ましたが、きょう(=10月2日)まで支払いはされていないといいます。
平尾さんは、額だけが重要ではないと訴えます。
平尾さん
「私が望んでいるのは、被害によって大きくマイナスになった人生を少しでも元のゼロに戻したいだけで、私が今つまずいている部分、回収のところも見てほしいです。額だけを見ないで、その後の被害者の救済というところも見てほしい」
「被害者は泣き寝入りするケースも」弁護士が指摘する“3つの壁”
「被害者は泣き寝入りするケースが多い」弁護士が指摘する“3つの壁”
森内彩子弁護士は「被害者が泣き寝入りするケースが大半と言っても過言ではないくらい、報われないことが多い」と説明します。
被害者が直面する壁として、次の3点を挙げます。
①精神面の疲労:傷ついた状態で、自分を奮い立たせながら長期間戦い続けなければならない
②時間との戦い:発信者を特定するために必要なログ(接続記録)は時間が経つと事業者側が削除してしまうため、証拠が消える前に素早く動かなければならない。
③コスト面の負担:迅速に対応するためには弁護士に依頼する必要があり、費用がかかる
平尾さんはIT分野に詳しかったため、自ら証拠保全や開示請求の知識を活かして対応できたといいますが、こうした手続きは多くの人にとって高いハードルになります。
賠償額はなぜ少ない? 国もようやく動き出したものの・・・
森内彩子弁護士
深刻な被害に対して、なぜ賠償額が少ないのか。森内弁護士はこう説明します。
森内弁護士
「慰謝料は、諸般の事情を考慮して裁判官の裁量で決まります。名誉毀損の場合は数十万円から100万円程度というのが長年の相場観として定着していますが、それはビラや立て看板、週刊誌の時代に形成されたもの。今はSNSで瞬時に世界中へ拡散する時代なのに、その深刻さが賠償額に反映されていません」
この“ギャップ”を埋めるために、政府はインターネット上の誹謗中傷に対する損害賠償額の引き上げなどについて議論を始めたものの、森内弁護士は「自殺者もたくさん出てきた。もっとスピードアップしないと被害は増える一方」と強調しました。
(「newsおかえり」2026年10月2日放送分より)
最終更新:10/06 12:00


