スタッフブログ
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スタッフの雑記

終演から8日。

■いやはや。『だーてぃーびー』が終わってはや1週間以上が経ちました■まあ現在はいろんなところから請求書をいただいて、「お、これはなかなか厳しいゾ」とか思っている最中で後処理はまだいっぱい残っているわけですけど。それにしてもここである程度まとまった文章を書いておかないことにはなあ。あまりたくさんの人には読んでもらえていないであろう当ブログですが、何より自分の記録として印象のはっきりしているうちに書き残しておかねば。・・・なのですが、うかうかしているうちに大変なテレビ番組を観てしまった■8月28日(日)に放送されたETVの「バリバラ~検証!『障害×感動』の方程式~」です。すでにネット上でかなりの話題になっているようですが、恒例の「24時間テレビ」がクライマックスを迎えようとする時間帯の真ウラで、実に刺激的な番組でした。われらが『だーてぃーびー』はまあ有体に云って「テレビに対する風刺」の演劇だったけれど、その点に関してだけ比べれば、先日の「バリバラ」の前では吹き飛んでしまうくらいにライトだ。うーむ。恐るべしバリバラ■あ、明日(か明後日)まとめて書きます(艦長)

終演から4日。

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終わりましたですよ、『だーてぃーびー~汚れたテレビ~』。みんなの努力の甲斐あって、6ステージ全ての回、満員のお客様にお越しいただくことが出来ました。うれしー!そしてきっと、みなさんに楽しんでいただけたと確信しています。うれしー!千秋楽が終わって4日も経つのですが、まだまとまった文章を書く気力が復活しません。別に何もしてないのですが、疲れました。心地よい疲れです。スタッフ・キャストみんな素晴らしかったよ!本当にありがとうございました(艦長)

中日終演。

■『だーてぃーびー』、半分の3ステが終了。羽曳野の伊藤がクライマックスで爆笑鉄板の台詞を噛むなど、いろいろありますが、絶好調で進んでおります。お客さまも大満足していただいている様子で、スタッフ・キャストのチームワークも最高。言うことありません■昨日の19日(金)、ABCテレビの夕方の報道番組「キャスト」で、≪テレビ局内のホールでテレビの裏側を描く問題作≫としてこの芝居を取り上げてもらったのですが、その中で、「この公演を企画したテレビマン」として紹介された艦長の唯一の不安は、身内、というか、放送にたずさわる人たちがこのお芝居をどう見るか?でした■売れっ子放送タレントである黒田さん、小塚さんがキャストにいることもあり、毎回、放送関係者が多数観に来られます。劇中、言葉尻だけとると、結構過激な台詞、僕が聞いてもドキッとするようなテレビに対する辛辣な批判がありますからね。怒られへんかなぁ・・・。でも、杞憂でした。単純に楽しんだり、共感したり、みなさん、感じ方はそれぞれだとは思いますが、テレビ界の人たちにとっても、この作品を観るのは無駄ではないと思います。「オレはそんな気持ちでテレビ作ってねえよ!!」と怒ることだって一つの正しい反応なんじゃないかな。作り手が、自らの握っている力(権力、影響力)の大きさに自覚的になることが、大切だと思うのです■とにかく皆さん、観てみてください。とりあえず笑えます。そして、娯楽の王様・テレビについていろいろ考えさせられます。観る側も、作る側も■8月22日(月)千秋楽のチケットも残りわずかとなりました。この機会を逃さないで!!(艦長)

撮影快調!

だーてぃーびー』初日まで6日。今日は稽古をお休みして劇中で使用する映像・音声の収録です。朝から大勢の若手役者さんとヒミツのある大物タレントがABCホールに集合して、馬鹿馬鹿しい録音や撮影を真面目に行っています。 艦長蒸発.JPG一番最初に撮影したのはこれ!真夏の日差しが照りつけるABCホールの玄関前で昭和のコメディアンのようなポーズをとるおっさん。私・艦長ですね。来月下の娘が30になります。でも頑張るのです。お芝居の方は、とんでもない問題作に仕上がりつつあります。この作品を観て、演劇とテレビと、両方をより好きになってほしい!そんな思いを込めてみんなで作っています。残席がどんどん少なくなっています。急げ!(艦長)

 

『だーてぃーびー』は観ないとマズいと思う

■夏を制する者は・・・なんて昔云いましたよね、今でも云うのかな?周りに受験生やその関係者がいなくてさっぱり分からない。そもそも受験とか大学とかって今でもあるの?そういえば現在私立大学に入学する人の過半数はいわゆる「入試」以外の方法で入るんだって読んだことあるなあ。40度に達する勢いの猛暑ではないけど、今年の夏はひと際こたえます。認めたくないけど年のせいかなあ・・・。なんて、よしなしごとならいくらでも書き連ねてしまいますがそんな場合ではない!この夏を制するのに、絶対必要なのはこれを観ること。

■『だーてぃーびー』初日まで2週間を切りました!もちろん台本は完成済み!後藤ひろひと久々の新作はめちゃくちゃ凄いことになりそう。掟破りの面白さです。今日は、内容と各出演者の役柄を具体的に、ネタバレ寸前まで書いてしまいましょう。
■舞台となるのは、大阪にある架空のテレビ局、DTV。夕方の生情報帯番組『土橋雄太の夕方ゆうたったー』は毎日高視聴率を誇る人気番組です。今日もまもなく番組スタート、ということで、スタジオに次々とスタッフ・キャストが集まってきます。一人ずつ、ほぼ登場順にご紹介しましょう。
datv02.jpg★アシスタント・ディレクター・由利・・・近藤貴嗣(ビーフケーキ)
★ディレクター・中内・・・橋田雄一郎(転球劇場)
★番組アシスタント(局アナ)吉永みら・・・小塚舞子
★気象予報士・嘉手苅・・・竹下健人(劇団Patch)
★コメンテーター(国際弁護士)・小野京子・・・楠見薫
★コメンテーター(推理作家)・滝沢良兼・・・川下大洋(Piper)
★滝沢のマネージャー・今井・・・満腹満(THE ROB CARLTON)
まずはこんな面々。みらは独立の相談をこっそり小野弁護士に持ちかけ、嘉手苅(かでかる)は「抱かれたい気象予報士No.1」になりたくて仕方なく、今井はなんとかテレビ出演に漕ぎつけた滝沢をどうしても売り出したい。そんな小さな野望渦巻くスタジオに登場するのが
★メイン司会者・土橋(どばし)雄太・・・黒田有(メッセンジャー)
この土橋、司会者としての腕は抜群なのだけれど、どうやら周りの人間からの評判は良くない様子。長年共に仕事をしてきた中内だけはいつも通り彼を盛り上げるべく必死ですが、この日は特に空気がおかしい。不慣れな初登場の作家がいたり、まだ到着していない出演者がいたり、何かと不穏なムードをたたえたまま本番の時刻が近づきます。・・・そして、開始ギリギリにやって来るのがこの男!
★コメンテーター・羽曳野の伊藤・・・久保田浩
一体誰?コノオッサン!?・・・この場面、ひょっとすると演劇の歴史において記念すべき瞬間なのかもしれません。黒田有と小塚舞子が仕切るテレビの世界に、何と小劇場界のレジェンド・羽曳野の伊藤が侵入してくる。電波vs.電波系の対決です!(多くの方にとって全く意味不明の記述かと思いますが、それはあなたのこれまでの人生が正しかったということです。しかし、『だーてぃーびー』を観てしまえば、その瞬間にあなたは、「伊藤を知らない人生」から「知ってしまった人生」に否応なく引きずり込まれるのです。申し訳ありません)
■けれどその直後、それどころではない大ニュースが、『ゆうたったー』のスタジオに飛び込んできます。それは、テレビ界を揺るがすような大事件。しかし、ひょっとすると『ゆうたったー』にとっては大きな「朗報」となりうる事態かもしれない・・・。舞い上がるスタッフやレギュラー陣。しかし、土橋だけは、喜べないある事情があった・・・■各人各様の思惑が絡み合う中、まさにショー・マスト・ゴーオンで番組は、そしてお芝居は進みます。いかにもワイドショーっぽいニュースを消化する中で、テレビ初出演の滝沢と伊藤を軸にさまざまなトラブルが続出。「テレビ生放送あるある」ギャグがいっぱい出てきます。ここは、お客様に気楽に楽しんでいただけるところ■しかしこの作品、そうそう気楽には笑っていられない部分にも踏み込みます。それは、娯楽の王様として半世紀以上君臨してきた巨大メディア『テレビ』の本質にも関わる問題だったりして・・・■劇の内容にはこれ以上踏み込めないので理屈っぽいお話になりますが、この作品は、僕の気持としては、『演劇を通じてのメディア・リテラシー向上の取り組み』です。つまり、テレビからの情報を無批判に鵜呑みにすることなく、テレビの特性(いい面も悪い面も)を理解して接してほしい、という、大袈裟にいえば啓発運動なのです。ですから、可能性としての≪テレビの裏側≫≪ダーティーな部分≫、が誇張され、喜劇化されて描かれます■しかし!(これは当初今回の企画の狙い目でもあったのですが)テレビ局の中にある劇場で、テレビの生放送を完全リアルタイムで、しかも実際この種の番組に出演しているタレントさんに演じてもらうと、怖いくらいのリアリティが出てしまう。怖いというのは比喩ではなく、艦長、本当に少し怖かったりしています(笑)■ま、とにかく、この芝居、絶対観てください。テレビも、演劇も、世界も、まだまだ捨てたもんじゃない。・・・そう感じてもらえると思います。あ、云い忘れていましたが、作・演出の後藤ひろひと氏ももちろん出演します。「作家」として・・・■テレビ界、お笑い界、演劇界からの精鋭キャストを操り、またまた大問題作を世に送り出してしまった大王の、エンディングのメッセージ。そしてさらに訪れる驚愕の大どんでん返し(というか、オチ)、『だーてぃーびー~汚れたテレビ~』是非その目でお確かめください!いよいよ8月18日木曜から!(艦長)

本格スタートしたったー。

ABCホールプロデュース公演第5弾『だーてぃーびー 汚れたテレビ』(8/18-22)、昨日キャスト、スタッフ全員の顔合せ・本読みがありました。初日までひと月余り、いよいよ本格始動です■自他共に認める非常なサッカーファンであり、つい先日まで行われていた欧州選手権の間はフランス時間で生活していたと伝えられる大王・後藤ひろひと氏が、ちゃんと台本を書いてくるのか!?・・・直前まで実は私たちヤキモキしていたのですが、無事、顔合せの定刻にはキャストの前にコピーが並び、それを読み始めるともう・・・!大王5年ぶりの新作は、大変な作品になるに違いないと確信したのでした■川下大洋、楠見薫、久保田浩という大王ファミリーともいえる面々は初見の本読みで台詞の意図を100%汲み取って既に爆笑を誘い、小塚舞子ちゃんほかフレッシュなメンバーも、大王の明快な説明ですぐさま勘所をつかみ・・・何より、黒田有さんさすがです。最初から、この作品の舞台となるテレビ番組『夕方ゆうたったー』の司会者・土橋雄太以外の何者でもない感じ。 懇親会2.JPGというわけで、一安心すると同時に、期待は大きく膨らむのでした。 ■この本読みの様子は、7月21日(木)深夜、ABCテレビ『スタンダップ!』でちょこっと放映されます。是非ご覧ください■そして終了後はご覧の通り、ワイワイ楽しく・・・。みんなで良い作品を作りますので、チケットまだの方はお早目にお求めください!(艦長)

 

(写真)画面手前左から時計回りに、橋田雄一郎、竹下健人、小塚舞子、近藤貴嗣、満腹満、久保田浩、楠見薫、黒田有、後藤ひろひと、川下大洋

うわの空・藤志郎一座のこと

■さあー、来週はいよいよ『だーてぃーびー』稽古スタートだ!胸が高まるぞっ!・・・その前に、ABCホールであさって日曜、こっそりと1回きりの演劇公演があります。


■7月10日(日)17:00、うわの空・藤志郎一座『ただいま!』そう云えば、本欄でこの劇団のことを一度も書いてなかったなあ。関西では正直云って知名度の低い、東京を本拠地とするこの一風変わった劇団がなぜ当ホールで公演を打つことになったのか、ご説明したいと思います。

■あれは一昨年、2014年秋のある朝。私が演劇コーナーの紹介役を務めているラジオ番組『浦川泰幸の劇場に行こう!』(現在は「橋詰優子の・・・」)の録音スタジオに、当時のメインパーソナリティ・浦川アナウンサーが、やや興奮気味にやってきました。そしてこんな話をするのです■「この間、めちゃくちゃ面白いお芝居を観たんです。中崎町の狭いライブハウスみたいなところで。番組スタッフに誘われて行ったんです。うわの空・藤志郎一座って劇団なんですけど艦長知ってます?あ、知らない。とにかく凄いんです、言葉では伝えにくい面白さなんですけど、1分に1回笑えます。あんなの初めて。今度大阪に来たら絶対観てください!」■・・・現在彼がメインキャスターを務めるABCテレビの夕方のニュース番組『キャスト』をご覧の方なら想像がつくと思いますが、浦川くん、何事にも辛口で、無暗に人やモノを褒めたりしない。だからこそこれは信用できる。第一、『小さくて面白い芝居』がこの世で三番目に好きな僕ですから(上位2つは人には言えない)、これは何とかせねば!とさっそくその「うわの空・藤志郎一座」についてウェブサイトを検索したのですが・・・。わかったのはこんな事実■東京が本拠地で、座長は村木藤志郎という中年のちょっと怖い顔をしたオジサン。あとのメンバーは、会社員や漫画家や、ほかに本業を持っている人が多いみたいで、つまり座長・藤志郎さんの色が非常に濃く出た、求心力の強い劇団であるらしい。劇団名の名付け親は放送作家界の大御所・高田文夫さんで、かつて東京喜劇人の合同公演として話題を呼んだ「雲の上団五郎一座」をもじった名前。大小いろんな小屋で公演しているが、大規模な本公演は、名門・紀伊國屋ホールで行っている。大阪公演を始めたのは数年前からで、年一ペース。現時点で次回は未定。しかし、過去公演の履歴を見る限り、来年(2015年)の秋にまた大阪に来る可能性が高いぞこれは・・・■というわけで、それ以来思い出すごとにこの劇団のホームページをチェックするようになったのです。そして予想通り、ある日のHPチェックで、大阪公演の告知があったのです!場所は浦川君が目撃したのと同じ中崎町のライブハウス。日程は2015年11月14日(土)のみ。のみって!・・・。手帳を見てみるとその日は運悪く仕事。上演は昼夜2回あるのですが、律義に業務をこなすとどちらにもひっかかってしまう!■当日まで悩んだ挙句、僕は昼の部開演30分前に、伝家の必殺技『御免一寸抜ケルワ』を用いることを決断。やや首を前傾させ両掌を顔の前で合わせる独特の印を結んで職場を後にし、中崎町へと飛びました。そして目出度く、うわの空・藤志郎一座『面白半分』を鑑賞したのです■硬くて造りの悪い椅子に座らされることが多い小劇場では、長い芝居は罪だと僕は思っています。しかし僕は終演時、時計を見て驚きました。上演時間2時間25分!長い!でも感じなかった!つまりそれほど面白かった!■では、どんな作風なのかというと・・・。実は僕、話を聞いた直後に一座の過去作品のDVDを何枚か購入して、チェックはしていたのです。基本的には、いわゆるシチュエーションコメディです。家族など気心の知れた人々の集団の何気ない日常の中にひとつ、深刻な『ある事情』が隠されていて後半それが・・・みたいな。「実はロマンチスト」と自称する座長の人柄が偲ばれる、意外なほど「いいオシバイ」です■しかし!何といってもこの劇団の武器は、まるで無限に弾切れすることのない機関銃のような座長のボケです。とにかくボケまくる。自由奔放、傍若無人。言葉遊びや時事ネタ風刺や単なるおふざけや・・・他愛ないギャグをひたすらやり続けるのです。しかしここが重要なのですが、他愛ないけれどセンスはいい。『プロのオヤジギャグ』といったらいいのでしょうか。我ながらいい表現かもしれません■周囲の役者は、座長が舞台にいる間はひたすらそれのフォロー、つっこみに回り、座長がいなくなると、鬼の居ぬ間に自分もボケる、といった感じ。楽しくて飽きることがありません ただいま.jpg■そして終盤、「ある事情」が明らかになると急に切ない空気が舞台と客席に溢れ返り、あろうことか不覚にも目頭が熱くなる!なんか、悔しいけどそんな展開です■芸風はあくまで大衆的、高田先生が高評価するのもむべなるかな、なのですが、反面、いわゆる演劇評論家に称賛されるような劇団ではないはずです。しかし僕は大好き!■後日、座長に感想などを記したメールを送り、一度大阪でお会いすることになりました。僕としては単に、大阪公演を途切れることなく続けてほしいと申し上げたかったのです。そのために何かお手伝いできることがあれば、と。なにせ、僕の観た回、お客様はわずかに15人程度。キャストスタッフ合わせた人数よりきっと少ないくらい。「もう大阪は無理か」と判断されても仕方ないように思われたのです■ところがその場の話の流れで、「折角だしABCホールさんでやってみるか!」と、座長おっしゃいまして。きっと酔った勢いです。あるいは、同席していた劇団の若手女優に見栄を張ったのだと思います。冗談はさておき、相当長くなりましたが、そんなこんなの事情で、東京の劇団・うわの空・藤志郎一座の代表作『ただいま!』が当ホールで上演される運びとなりました■今回、東京公演は紀伊國屋サザンシアター(座席数468)、名古屋公演は七ツ寺共同スタジオ(名古屋アングラ界の老舗・キャパ90程度)、そして大阪がキャパ300弱のABCホールと、振れ幅の大きい巡演です。この自由な感じもこの一座らしさだな、と思えるくらいには、僕もにわかファンになりました。7月10日(日)17:00から、1回きり、当日券はたくさんあるはずです。ぜひこの独特の世界を体験してください(艦長)

7月10日(日) 17:00    (上演時間は2時間程度です)

演劇界の巨人のこと

■本欄でいつか一度は記させていただきたいと思っていたのが、先ごろ亡くなった蜷川幸雄さんのことです■逝去が報じられてから数日間のメディアの扱いの大きさはものすごいものでした。後世に残る戯曲を書いた劇作家でもない、まして俳優業からは遥か昔に足を洗われている、あくまで裏方である「専業演出家」として、これだけ多くの人から注目されてこられたのは驚くほかはありません■僕が最後に鑑賞した蜷川作品は、今年2月にシアターBRAVA!で上演された『元禄港歌』だったのですが、先日、蜷川さんも大好きだったというこの劇場のお別れ会に出席させていただき、色々感じることがありました。その席上、BRAVA!の11年の歴史で動員したお客様が200万人に達する、という劇場の方の言葉がありました。すごい数です。しかし同時に、テレビの人気番組なら毎回常にそれよりたくさんの人が視聴している、という数字でもあります■誤解ないように申し添えますが、無論僕はテレビがすごいとか、BRAVA!がどうだとか云いたいのではありません。劇場とは、演劇とはそういう媒体(?)だということです。劇場という狭い空間での作業の積み重ねが、これほど多くの人からの賛辞を獲得するというのは、ヨーロッパのように(よく知らないけど)、演劇が文化の大切なジャンルとして手厚く保護されているわけではない日本では、本当に驚くべきことだと思うのです■蜷川さんの作品を初めて観たのは、1980年前後、『NINAGAWAマクベス』が先だったか『近松心中物語』だったか・・・いずれも、アングラから商業演劇に転向されてからの初期の傑作とされる作品です■強烈だったのは、シェイクスピア劇なのに舞台装置がどう見ても仏壇で、その中に登場する人物が全員身に着けている、当時NHKの人形劇等で人気になっていた辻村ジュサブロー(現・寿三郎)デザインの衣装の異様さとか。平幹二朗、太地喜和子の二人が大量に舞い降る雪の中を道行するクライマックスで、森進一が歌うオリジナルソング(作曲:猪俣公章)が大音量で流れる、そのかすれ声、とか。こういうのを『異化効果』って云うのかなあ、などと思いながら観ていたような気がします■『異化効果』というのはドイツの劇作家・ブレヒトが唱えた、たぶん一筋縄ではいかない演劇理論で、≪観客が劇の流れに感情的に没入してしまわず批評的に観るように仕向ける仕掛け≫で完全な間違いではないと思うのですが、社会の変革を目指す運動という側面も有する種類の演劇で、かつてよく使われていた言葉です■当時、蜷川さんは、小劇場から商業演劇の世界に進出したことで多くの人から批判されたそうですが、それが的外れだったことは、その後の歴史が示しているのではないでしょうか。『高いチケットを買って観に来る全ての観客を満足させるための美しさ、豪華さ、役者の見せ場など商業演劇に必要な要素は担保しつつ、演出の底にはしっかりアンダーグラウンドな精神が残っている』、というのが、ずっと変わらない僕の蜷川演劇についての感想です■アンダーグラウンドという言葉が余りに時代遅れだとすれば、『民衆に寄せる思い』と言い換えてよいと思います。晩年の作品で拝見した中では、『ヘンリー4世』、『元禄港歌』で特に印象に残っていますが、蜷川演出の舞台では、大量に登場する市井の人々、中でも社会的に弱い立場にある人たちが、明るく、猥雑だけれど常に力強く描かれます。そしてその描写が、お話の展開の触媒として作品の中で有効に機能しているのです。「実は物語を動かしているのはこの人たち民衆のエネルギーなんだ」、と思わせる部分が確かにあるのです■幸運にも、僕は蜷川さんの稽古場でのお姿を何度か取材、というより見学させていただいたことがあります。実はその体験で、一番強く記憶に残っているのが、アンサンブルと呼ばれる"その他大勢"的な人たちへの細かい目配りなのです。蜷川さんは、どんな若くても無名でも、彼ら一人ひとりが「自立した俳優としてそこにいる」ことを求めます。あくまで厳しく、深い部分で優しい。有名なモブシーンの迫力は、技術ではなく、そんな姿勢から生まれるのだと知りました■蜷川幸雄の『ひとびと』への思いは、きっと劇中の登場人物に対しても、生身の役者に対しても、同じだったのではないでしょうか(艦長)

『太陽』あす大阪初日!

イキウメ『太陽』、あす初日です■2011年に初演され、読売演劇大賞・大賞ほか多くの賞を受賞した、劇団の、そして代表で作・演出の前川知大さんの代表作です。2014年には『太陽2068』というタイトルでリライトされ、先ごろ他界された蜷川幸雄さんが演出されています。さらに、神木隆之介・門脇麦という若手実力派俳優のW主演による映画版『太陽』(監督:入江悠)が、現在まさに公開中です。と、いうわけで、文句なしの話題作。僕は初演版を当ホールで、映画版を試写で拝見しました。蜷川版はTV放映された際に録画したきりまだ・・・という状態です■余談ですが、僕はテレビで舞台中継の番組があると見境なく録画してため込む、という趣味というか本能がありまして、Betamaxに始まり、VHS、DVD、BDと三十数年以上にわたり録り続けてきた結果、その数が現在5~600。ちょっとしたコレクションです。田舎の日本家屋で梅コブ茶など飲みながら、大型モニターで毎日1本古い芝居のビデオを観る、というのが理想の最晩年なんですけど、どうなりますか■余談ついでにさっき使った舞台『中継』という言葉ですが、本来、劇場・スタジアム・事件現場など、放送局の外からリアルタイムで映像を放送局に伝送し、局が『中継ぎ』となって各家庭の受像機に届ける、という意味。だから、もともと生放送の際に使う用語です。演芸はともかく、芝居の生中継なんて今は滅多にありませんが、昔の資料を見ると、テレビ草創期においては、漫才、落語、講談、浪曲、軽演劇はもとより、新劇、歌舞伎、オペラ、能狂言でさえゴールデンアワーに生放送していたそうです■そもそも『テレ・ビジョン』とは、『遠い』+『視覚・光景』ってことで、直接目にすることはできない遥か遠方の映像を、家に居ながら目の当たりにできるというのが真骨頂です。まあ、テレビ局の開局初期はとりあえず無事に電波を送りだすのに手一杯で、自分たちで番組を全部作って番組表を埋める余裕がなかったから、いろんな『中継モノ』が多かったのかもしれません。しかし、簡単には劇場に行くことができない多くの人々のためにも、もっと演劇の番組が増えればいいのにな、と思います■ようやく本題ですが、今回の『太陽』、前述の通り、僕などが今更何も云うことのないほど、すでに各所で高い評価を得ている作品です たいよう.jpg■・・・近未来の日本。数十年前のバイオテロで恐ろしいウイルスが地球全土に拡散し、大多数の人間が死滅。わずかに生き延びた人類は、二つの種族に分かれてしまっていた。感染を免れた旧い人類と、感染した後にそれを克服する力を獲得した新しい人類。いつまでも若く強い肉体と知力を持つ、彼らの弱点はただひとつ、太陽の光を浴びると死に至る、という点。夜に生きる彼らは自らを「ノクス」と呼び、旧人類を限られた地域に隔離し、社会を支配していた。そんな暗い未来で繰り広げられる、夜と昼の間の物語■映画版は相当にダークで凄絶な描写もある作品(しかし傑作!)でしたが、イキウメの2016年アップデート版はさて?前川さんの書く台詞にいつも漂う独特のユーモアが、このディストピアSF的世界にも潤いと温もりを与えているはずです■自分ならどちらを選ぶだろう?どう生きるべきだろう?現実世界の諸問題を映す暗喩に満ちた『太陽』、すでに売り切れの回もあるようですが必見です!(艦長)


イキウメ 『太陽』  作・演出 前川知大
6月3日(金)     19:00
   4日(土) 13:00 18:00
   5日(日) 13:00 18:00

三人会。それとHP改修の件

■恒例、『かたりと落語とハーモニカ』、本番中です■山田雅人・桂む雀・三代澤康司・・・同い年で仲良しの三人が50歳になったのを記念に、還暦まで続けようと始めたこのライブ、当ホールでははや5回目。今日は桂む雀さん55歳の誕生日です。おめでとうございます!■来年もこの日に開催して、11年前脳溢血に倒れて以来懸命のリハビリを続けているむ雀さんを応援しよう、その努力する姿をお客様にも見ていただこう、とさっき決定しました。でも、僕は彼らより少々年長さんで一足早く還暦を迎えてしまったため、残念ながら来年の今日はここにいないんだなあ。ちょっとだけ淋しいです■それはそうと、6月から当ホールのホームページがお色直しして少々スリムになります。公演の情報などについては本ブログで積極的に補足していきたいと思いますので、これからもよろしくお願い致します(艦長)

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