コメンテーターのつぶやき

巧妙な語り口でニュースに切り込む、おはようコールのコメンテーター陣。 そんな海千山千の識者が、意外な趣味・趣向で文章をつづる『コメンテーターのつぶやき』。 これを読めば、新たな世界が見えてくるかも!?

コメンテーター comenter中川謙

2013年3月22日(金)

拝啓民主亭どの

 どの政党を支持するかに関わらず、民主党の今のありていには多くの人がさまざまな感慨をお持ちのはず。私もその一人である。思いを打ち明ける機会がなく、つい旧知の民主党政治家(年末の総選挙で落選)に一筆したためることになった。個人的な事情にわたる記述を削り、一部手直ししたものを以下に掲げる。ご一読くだされば幸い。
        ×      ×       ×       ×
 
 おや、もう店じまいですか。早いじゃないですか。まだ料理は何も味わっていませんよ。「セイジシュドウ」やら「コンクリートカラヒトヘ」、それに「セイカツガダイイチ」なんていうのも。メニューには目新しい品が、ずらり並んでいました。中でもパンチを感じさせたのは「ダツゲンパツイゾン」。これだ!と注文を出しかけたら、おや、店主のあなたはそそくさとノレンを下ろしかけているではありませんか。
 何でも、新装開店のあなたの店に客足を取られたはずの隣の老舗が、このところ息を吹き返し、形勢はまたまた逆転したのだ、とか。わずか3、4年のめまぐるしい有為転変。それにしても気になるのは店主さん、あなたの覇気のなさですよ。まるで腑抜けです。
         
 ざれごとはこれくらいで。2009年、そして2012年と、たった3年で日本が2度も経験した政権交代は、どれも私にはなかなか見ごたえのあるものでした。昨年末、民主党を蹴落とした自民党・安倍政権は、確かにやっていることにメリハリがある。「人からコンクリートへ」。公務員の給与は減らし、浮いた予算は「国土強靭化」で公共事業に回す。民主・野田政権の原発「2030年代ゼロ」方針なんぞは、一体どこの世界のたわごと?の感。
 「生活が第一」は、いまではもちろん「経済が第一」です。アベノミクス → 円安 → 株高 の連鎖で、大企業は久々のエビス顔。恐らく金融投資の余裕があるお金持ちもね。働くものの暮らしは当然、後回しになるでしょう。それどころか労働者をカネで解雇できる方策を、自民党は本気で検討しているようですね。
 それでいいじゃないですか。
「経済がだめなら何も始まらない」。自民党はこう言っているのです。
 それなら民主党はこう言いましょうよ。
「暮らしがだめなら何も始まらない」
 経済、暮らしのどちらに優先権を与えるのか。これは先進国の政治では当たり前の、しかもわかりやすい基本的な対抗軸です。自民党は長らく、この2つを包み込んだ一手引受けを巧みに演じてきました。右肩上がりの成長が終った今、それはもう無理な相談です。そこで選んだのが政策にメリハリをつける道、八方美人であることはきっぱり止めたのでしょう。
 民主亭、いや失礼、民主党の新メニュー(ここも綱領と正しく呼びましょうね)を拝見しました。「生活者」「納税者」「消費者」「働く者」の立場に立つ、と宣していますね。
それでいいじゃないですか。
 わかりやすくて。売り筋のターゲットを絞ったのですね。町内にある2軒の商売がたきにそれぞれに特徴ができれば、これは客にはありがたい。同じように2大政党(いま日本にあるのか?)に特徴があることは、本来は国民にありがたいはず。民主主義の根幹である「選択」は、選択肢の違いがはっきり目に見えてこそ意味のあるものなのだから。
 民主亭、あっ、またもや失礼、民主党に新しいメニューの用意があることはわかりました。足りないのは多分、腕をふるって客に料理を堪能させようとする店主の心意気ですよ。言っておくけど3年待って、何も出てこなかった客の恨みは相当なものですからね。
                                    敬具