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中根裕磨さん 和歌山県田辺市 「山伏そば拝庵」

202264日(土) 午前11時

ミシュランに掲載された秘境の十割そば

中根裕磨さん 和歌山県田辺市 「山伏そば拝庵」

世界遺産・熊野古道の中でも険しい道で知られる中辺路に、熊野本宮大社まで一時間のところにある集落があります。車で訪れるのも大変なこの秘境に、2017年、一軒のそば屋がオープンしました。「山伏そば拝庵」。店主の中根裕磨さんが、山で修行する現役の山伏であることにちなんだ店名です。

日本各地の名店をめぐり修業した中根さんは、自家栽培したそばの実と、全国で惚れ込んだそばの実を使い分けます。打ち立てを提供する十割そばは、熊野古道を歩く人たちの間で瞬く間に「美味しい」という口コミが広がりました。塩・大根おろし・味噌でいただくざるそば「山伏そば」が一番人気。春先から夏場にかけては、その日採れた10種類以上の山菜を使った山菜そばも堪りません。『ミシュランガイド和歌山2022』に掲載されたことで、今年のGWはかつてない忙しさになりました。

東京出身の中根さんは、山伏に憧れて脱サラし、27歳で和歌山へ。「山伏の修行をしながら、林業や農業も覚えて自給自足生活を送っていました」。そこで農業研修に来ていた紗代さんと出会い、結婚。三人の子供と触れ合うのが夫婦の癒しですが、まもなく四人目が産まれます。

中根さん、蕎麦以外にも、1日1組限定の民宿も始めました。「コロナでストップしてましたが、この春から再開しました」。この民宿を利用する一番のお客様は山伏の御一行。宿では精進料理でもてなします。その味も好評なようです。

5月中旬、ある山伏仲間から、こんな依頼を受けました。それは山伏の聖地にして秘境中の秘境「前鬼」で行う護摩祈祷に参加して、出張そばを振る舞ってほしい、というもの。はたして中根さんは、そんな奥地で納得のいくそばを振る舞うことができたのでしょうか。

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山伏そば拝庵
概要熊野本宮大社から車で10分のそば処。こだわりの手打ち、石臼挽き、十割そばを雄大な景色を眺めながら、熊野の恵みを味わえるお店。
住所和歌山県田辺市本宮伏拝170
電話番号0735-30-0435
営業時間11:00~15:00
定休日全日要予約(不定休)
※「山伏そば拝庵」HPをご確認ください。
備考山伏そば1,200円、山菜そば1,800円、そばがき900円
山伏宿アジール
概要熊野本宮大社にほど近い熊野古道、伏拝王子の傍にある一棟貸切のお宿です。敷地内にある「山伏そば拝庵」こだわりのお蕎麦を味わいながら、風、空、草花、鳥、虫と一体になって、ゆるりと流れる時間に身も心も開放しながらお過ごし下さい。
住所和歌山県田辺市本宮町伏拝781
電話番号0735-30-0435
営業時間チェックイン15:00・チェックアウト9:30
定休日不定休
備考1泊2食付き
※1名11,400円、2名10,400円/人、3名~9,400円/人
(GW・SW・お盆・年末年始は+2,000円/一泊)

各ページに掲載している内容は、取材・放送時点のものです。消費税率移行に伴う価格変更等についてご留意下さい。

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浅田晶久さん 『浅田製瓦工場』 京都市伏見区

2025524日(土) 午前11時

最後の京瓦職人

浅田晶久さん 『浅田製瓦工場』 京都市伏見区

京都市伏見区。この地で110年以上、瓦を作り続けている『浅田製瓦工場』。現在、京都でただ一人、「京瓦」を製造しているのが、三代目の浅田晶久さん。「京瓦」の神髄は「磨き」と呼ばれる技法。金属のヘラで丁寧に磨き上げ、重厚な光沢と深い鈍色の風合いを持たせる伝統の技術です。浅田さんの手掛けた瓦は、歴史ある寺社や建物の屋根を飾っています。

そんな「京瓦」も、時代と共に需要が激減。かつて京都に十数軒あった瓦工場は、今やここだけ。後継者もおらず、厳しい状況が続いています。「それでも後に残していかなあかん」。伝統を次の世代へ繋げたい。喜寿を目前にしても、休むことなく「京瓦」の可能性と未来への道を追求する浅田さん。しかし今、ある大きな決断を迫られていました。

先月、開幕した大阪・関西万博。「関西パビリオン」の中の京都ゾーンの床と壁を覆う素材として使われたのが「京瓦」です。瓦製作を監修したのが、浅田さん。オファーしたのは、空間デザインを担当した彫刻家の名和晃平さんです。「京瓦のおかげで、ここは静謐な空間になりました」。

浅田さん、屋根がダメなら床や壁にと、京瓦の未来のために、新たな可能性に挑みます。「これ、アインシュタイン・タイルといって、床に敷く」。不思議な形の13角形。早速、デザイン会社から発注がありました。その枚数、1840枚。一枚一枚、想いを込めて仕上げていきます。納品するのは東京都内のオフィス。さて、どんな空間になったでしょう。

切なる思いで、京瓦を残す道と、後継者を探し続けてきた浅田さん。しかし経営は厳しく、人材の採用すらままならないのが現実です。そこで昨年12月、大きな決断に踏み切りました。それは114年の歴史を持つ『浅田製瓦工場』の経営権の譲渡。

同じ未来を見据え、経営権の譲渡にむけて共に歩んできたのは、息子の憲和さんです。憲和さんが2年以上かけて探したのが、京都指定伝統工芸品の「事業再生と企画運営」を行う会社でした。しかし新体制に向けての大切なミーティングで、親子は激突します。心の整理がつかない父親の姿勢を見て、憲和さんがぶち切れました。「何が残したいや!全部自分で潰してるやんけ!必死やねんこっちは!」

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