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中川喜裕さん 滋賀県長浜市 キャンプギアブランド「GNU」

202476日(土) 午前11時

伝統の漆でアウトドア製品

中川喜裕さん 滋賀県長浜市 キャンプギアブランド「GNU」

5月に開催されたとあるキャンプイベント。そこには漆塗りのキャンプ道具が並び、訪れた人たちの注目を集めていました。主催したのは、漆のアウトドアブランド『GNU』を手掛ける漆塗り職人。実は彼、滋賀県長浜市で200年以上続く、仏壇店の五代目なのです。「漆の文化を残したい!漆の素晴らしさを多くの人に知ってほしい!」その一念で始めたのは、業界の常識を覆す大胆過ぎる活動でした。

1807年から仏壇・仏具の製造を手掛ける「カネイ中川仏壇」。その若き五代目が、今回密着する中川喜裕さんです。長浜の仏壇作りは7工程に分かれ、中川仏壇店が手掛けるのは、漆塗、金箔押、組み上げ。漆塗り職人は「塗師」と呼ばれます。刷毛は人毛。中川さんの仕事ぶりを見てみましょう。仏壇修理の次に取り掛かったのは、GNUのアウトドアグッズでした。漆は軽くて丈夫、耐水性と抗菌性に優れているので、キャンプ道具に最適。人気の製品をいくつか紹介します。

中川さんは、両親と妻、子ども2人の6人家族。四代目の父は現役の塗師です。大学卒業後、各地の仏壇店で修業を始め、2017年に実家に戻ります。当時、仏壇の需要は激減しており、コロナ禍で増々ピンチに。キャンプ好きだった中川さんは、自分のナイフに漆を塗っていて、この良さを皆に伝えたいと、SNSに「アウトドアナイフに無料で漆を塗ります」と投稿。すると、大量のナイフが届いたのです。

同業者からは「高価な漆を無料でばらまくなんて言語道断」と凄まじい非難が。しかし、頑固一徹な父は何も言いませんでした。ひたすらナイフに漆を塗る毎日。すると、ナイフを受け取った人たちから感動と感謝の声が届き、2021年4月、GNUを立ち上げたのです。

漆の魅力を情報発信する中で、始まったプロジェクトがあります。病院の看護師から「NICU新生児特定集中治療室では抗菌性の問題で、子供が遊ぶ木のおもちゃが持ち込めないが、抗菌性の高い漆を塗れば大丈夫」と依頼され、SNSで漆塗り仲間を募集したり、製茶問屋と「アウトドアで日本茶を楽しめる漆の器」を企画したり。中川さんの挑戦はまだまだ広がり続けます。

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カネイ中川仏壇(GNU URUSHI CRAFT)
概要滋賀・長浜で伝統の仏壇の製造・販売・修復を手がけながら漆のキャンプギアを生む職人
住所 滋賀県長浜市曽根町1315
電話番号0749-72-8115
営業時間10時~18時
定休日土曜・日曜・祝日
備考GNUの商品は不定期販売。予約は不可で新規制作・在庫がある場合のみ、イベントやホームページにて販売

ホームページ(カネイ中川仏壇)
https://www.kaneinakagawa.com/

インスタグラム(GNU URUSHI CRAFT)
https://www.instagram.com/gnu_jp/

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前川恭子さん 滋賀県栗東市

2025719日(土) 午前11時

JRA初の女性調教師

前川恭子さん 滋賀県栗東市

馬主から預けられた競走馬の体調を管理し、トレーニングを行って最良のコンディションでレースに出走させることを主な仕事とするのが、競馬の調教師。日本中央競馬会・略称JRAが発足して70年、女性の調教師は一人もいませんでした。新たな歴史の扉を開いたのは、前川恭子さん。JRA初の女性調教師として2025年3月、前川厩舎を開業しました。「自分が関わるスタッフと馬を、幸せにしたい。」

滋賀県栗東市にある、栗東トレーニング・センター。競走馬に携わる人たちの1日は夜明け前から始まります。少しでも異変があれば、調教には出しません。馬の一生を左右する大きな怪我につながることもあるからです。馬が調教コースに出た後は、スタンドから動きをチェック。仕上がり具合を確認し、万全の状態でレースに出走できるよう計画を立てます。

前川恭子さんは千葉県出身。11歳のころから乗馬クラブに通い、馬に関わる仕事がしたいと思うようになります。筑波大学では馬術部に所属し、卒業後は北海道での牧場勤務を経て、2003年にJRAの厩務員になると、2004年に調教助手に。調教師になることには悩みもありました。しかし、「自分が思い描く厩舎を作って、馬とスタッフを幸せにしたい」と覚悟を決め、5度の受験を経て、合格率10%以下の調教師試験の難関を突破したのです。

この日、前川さんは北海道にいました。名門の育成牧場「社台ファーム」で、未来の名馬を見つけ出し、馬主に推薦するためです。前川さんと共に鋭い眼光で馬を見つめていたのが、数多くの名馬を輩出してきた矢作芳人厩舎の矢作調教師でした。実はこの二人は師弟関係。
「彼女は大胆不敵だが、細やかな面もある。後に続く女性たちのためにも成功してほしい。」

開業したばかりの前川厩舎。厩務員と調教助手、12名のスタッフと共に、前川さん独自の工夫でサラブレットの世話をしています。いくつか見せてもらいました。

7月1週目、栗東トレーニング・センターでは、厩舎で最も人気のある牝馬、モズメイメイの調教。狙うは前川厩舎初となる「重賞レース」制覇です。前川さんは7月6日、福岡県の小倉競馬場へ。モズメイメイは賞金の高い重賞レース『北九州記念』に挑みました。前川厩舎、初の重賞制覇なるか?いよいよレースがスタートします!

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