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荒井恵梨子さん 滋賀県 長浜 『荒井木籠製作所』

20241123日(土) 午前11時

幻の工芸品 小原かごを受け継ぐ木かご職人

荒井恵梨子さん 滋賀県 長浜 『荒井木籠製作所』

木をはがして編む、ある「かご」が注目されています。それは滋賀県で幻と呼ばれた「小原かご」。滋賀県小原村で、800年の歴史があると伝えられるこの「かご」の製造は、この村の重要な産業の一つでした。しかし平成7年に廃村となり、いまや小原村出身でこのかご作りを継承している職人は、たった一人しかいません。太々野㓛さん、88歳。その太々野さんの作るかごの美しさに衝撃を受け、小原かごを学び始めたのが、今回の主人公、荒井恵梨子さんです。

荒井さんは、自らナタとチェーンソーを手に森へ分け入り、広葉樹などを伐採します。そして山の麓にある古民家『荒井木籠製作所』でかごを編んでいるのです。穀物を入れる「まめかご」、買い物に使える「手提げかご」、小物入れの「ちんかご」など、荒井さんが作るかごは、滋賀県伝統の小原かごの技術を使った愛らしいものばかり。

小原かごは生木を使うのが特徴で、年輪にそってはいだ木を薄く削って編んでいきます。「小原かごは日用品です。使う度に手の脂がしみ込んで艶が出てきます。使うことがメンテナンスとなり、100年もつ軽くて丈夫なかごです」。

荒井さんは栃木県出身。大学、大学院へ進学し、山間部村の生活用品の技術や文化の継承について調査研究を開始します。そして結婚して、夫の故郷である滋賀県長浜にやってきました。そこで生活道具「小原かご」の師匠、太々野㓛さんと出会うのです。元々小原かごは、長男の一子相伝でした。にもかかわらず、移住者で女性の荒井さんを弟子にしたのは何故だったのでしょう。そこには、800年の伝統を未来に繋ぐ、ある強い想いがありました。

幻の小原かごを多くの人が知るきっかけとなったのは、荒井さんが昨年書いた本『小原かご 自然と神々と暮らした人々の民具』でした。この本が「2023年 文化で滋賀を元気に!大賞」を受賞し、小原かごが再評価されたのです。また、この本は荒井さんがかご職人として生きる決意をさせる大きな機会となりました。

こうして小原かごファンを増やした荒井さんですが、小原かごを若い世代に繋ぐため、チャレンジしたいことが沢山ありました。

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荒井木籠製作所
概要「荒井木籠製作所」は、かつて滋賀県長浜市余呉町の山間の村々でつくられていた生活道具「小原かご」を中心に、広葉樹などの幹を使った木籠の製造・販売を行っています。
住所滋賀県長浜市
備考連絡先
eriko.arai@kei-fu.com

荒井木籠製作所ウェブショップ
https://keifu.shop-pro.jp
カゴアミドリ 松本店
概要日本・世界のさまざまな素材のかごを取り揃えるお店
松本の地から、かごの魅力を発信。
住所長野県松本市大手1-3-28 神山ビル2F
電話番号0263-50-4475
営業時間11時~17時
定休日火曜・水曜

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網野篤子さん 京都市

2025712日(土) 午前11時

ガラス細工で作るリアルな金魚

網野篤子さん 京都市

ガラス工芸の博物館で開催されていた「超絶技巧 硝子展」。ここで注目を浴びたガラス細工が…夏の風物詩、金魚。細部まで再現されたガラス細工の金魚は、まるで生きているような躍動感があります。まさに「超絶技巧」。この金魚の作品を作っているのが、ガラス作家の網野篤子さん。彼女が金魚をガラスで表現する理由、それは「金魚が大好きだから」。

京都の深泥池のほとりに、この地で生まれ育った網野さんのアトリエがあります。網野さんはバーナーワークという技法で、色ガラス棒を素材に20年以上、金魚を作っています。とにかくリアル。本物と比べてみても、その再現性に驚かされます。品種ごとに異なるシルエットや、ヒレの微細な特徴まで、見事に再現されています。では、その作品制作を見せてもらいましょう。

様々な色のガラス棒をバーナーで溶かして形にしてゆきます。溶けたガラスが垂れぬようつねに回転させ、温度を均一に保ちます。温度差ができると、ガラスが割れてしまうので、この調節がとても難しい。ガラスを継ぎ足し、先の細いピンセットでひれの膜を作り、尻びれ、尾ひれと、様々な器具を駆使して、本物に近づけてゆくのです。時には金箔や銀箔を使うことも。

網野さんは、ガラスの金魚を美しく仕上げるため、日々、研究を重ねています。やって来たのは、金魚の一大生産地・大和郡山。養殖のプロの話を聞き、様々な種類の金魚を見て、創作の源にしています。今日のお目当ては「大阪らんちゅう」。江戸時代から大阪を中心に、広く飼われた品種で、太平洋戦争の時代に絶滅の憂き目に遭いました。近年、愛好家たちが力を尽くし、見事、復活したそうです。網野さんのガラス細工で表現した「大阪らんちゅう」とは?

この日、網野さんに東京での展示会のオファーが舞い込みました。そこで新作を披露することにしたのです。挑戦するのは「ピンポンパール」という金魚。その名のとおり、まるでピンポン玉のように金魚です。網野さんはピンポンパール専門店を訪ね、じっくり見学して、創作のヒントを得ました。初めて表現する「ピンポンパール」、はたして納得のいくガラス細工に仕上がるのでしょうか。

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