今宵も三番筋に、晴らせぬ恨みを抱えた一人の町人がやってくる。男はヤクザ者に娘を殺されたかたきを討ってほしいと訴えると、金子を祠に備えた。お菊(和久井映見)の差配で、渡辺小五郎(東山紀之)、経師屋の涼次(松岡昌宏)、瓦屋の陣八郎(遠藤憲一)たちは、次々と的を手にかけていく。ところが、リュウ(知念侑季)がいざ「仕事」を果たそうとしたとき、その場に頼み人本人が体中に武器を帯びて現れ、自らヤクザ者を刺し殺し、こう言い放つ。
まさかの事態に言葉を失うリュウだが、「頼み人に顔を見られたら、その命を絶つ」という仕事人の鉄則に従い、小五郎が男を斬り捨てた。「仕事」の世界の冷酷さに嫌気がさしたリュウは、小五郎に反抗的な目を向けると、その場を立ち去った。その夜以来、リュウは姿を消してしまう……。
同じ夜、江戸の町では驚くべき事件が起こっていた。若い男が焙烙玉を担いで遊郭で自爆し、大勢の人間を巻き添えにしたのだ。事件の捜査を始めた小五郎は、新たな相棒の同心・住之江彦左衛門(松尾諭)から気になる情報を知らされる。自爆犯は死の直前に「我らの怒りを恐れよ」という謎めいた言葉を残したというのだ。一方、涼次によれば、自爆に用いられた焙烙玉は、素人が簡単に手に入れられるものではないらしい。
涼次の見立てどおり、焙烙玉は組織的に作られていた。とある屋敷で、雀蓮(間宮祥太朗)という青年の監視の下、焙烙玉作りに精を出す少年少女たち。それを前に、「まだまだ足りない」と言う謎の男・壬生の幻楼(奥田瑛二)。彼こそが、恨みを持つ者たちに武器を提供し、江戸の町に自爆事件を仕掛けた張本人であった。
幻楼の陰謀によって、同様の復讐殺人と自爆事件が立て続けに発生する。江戸の町が恐怖と混乱に包まれる中、今度は人々でにぎわう縁日に、新たな自爆犯が現れる。子どもたちが巻き込まれそうになったが、すずらん(黒木瞳)という女性がとっさに爆弾を水の中に投げ込み、事なきを得た。彼女は、恵まれない子どもに無償で読み書きを教えることで評判の「すずらん塾」を主宰する女性だという。奉行所から表彰を受けるすずらんだが、彼女にもまた深い事情があり……。
果たして、幻楼の目的とは何なのか?行方知れずのリュウの身に一体何が起こったのか?謎が謎を呼ぶ中、幻楼の驚くべき正体が明らかになる!そのとき、小五郎はかつてない苦渋の選択を迫られることになるのだが!?