「ABCお笑いグランプリ」は、1980年にABC創立30周年を記念して放送された「ABC漫才・落語新人コンクール」を原点とし、歴代のグランプリ受賞者には、ダウンタウン、ナインティナイン、中川家、ますだおかだ、フットボールアワーなど、今日のお笑い界を牽引する豪華なメンバーが名を連ねる。第33回大会からは、名称を「ABCお笑いグランプリ」と変更し、出場資格も「デビュー10年以内」「日本全国のプロのお笑い芸人」と広く門戸を開放。以降も、漫才、コント、ピン芸など、笑いの首都・大阪のお笑い異種格闘技戦として、熱い闘いを展開している。

「第39回ABCお笑いグランプリ」は、全国から570組がエントリー。7月8日（日）にABCテレビ本社スタジオで行われた決勝戦には、一次選考570組、最終予選の60組を勝ち上がった精鋭12組が顔を揃えた。司会は、藤井隆と川添佳穂（ABCテレビアナウンサー）が務め、グランドリポーターの千鳥・ノブが審査員席や出演者控室など、グランプリの裏側をリポート。決勝戦の模様は、ABCテレビローカルにて生放送された。

決勝戦は、ファーストステージと、ファイナルステージの2ネタ方式を採用。審査は、小沢一敬（スピードワゴン）、黒田有（メッセンジャー）、柴田英嗣（アンタッチャブル）、陣内智則、ハイヒール・リンゴ、兵動大樹（矢野・兵動）、藤本敏史（FUJIWARA）（※五十音順）という、幅広いジャンルの先輩芸人7名が当たった。

ファーストステージでは、12組が3つのブロックに分かれ4分のネタを熱演。（※ネタ順はくじ引きで決定）。審査員は各ブロックの出場者を1位10点、2位5点、3位3点、4位1点で採点し、最も高得点の組が決勝へ勝ち上がる。

ファーストステージの結果、東京ホテイソン、ファイヤーサンダー、蛙亭の3組が、ファイナルステージに進出。しかし。ファイナルステージでは、ファーストステージと異なる4分のネタを披露しなければならない。各審査員の持ち点は100点。
抽選により、ファイナルステージのトップバッターは東京ホテイソンが登場。“水族館デート”をテーマに、ツッコミのセリフに工夫を凝らした漫才で651点を獲得した。続くファイヤーサンダーは、無人島に不時着した設定のドラマチックなコントで沸かせ、653点を奪取し暫定チャンピオンの座に。最後は、蛙亭が破天荒なコントを披露するも、641点に終わった。その結果、第39代のチャンピオンにはファイヤーサンダー（ワタナベエンターテインメント）が輝き、優勝賞金100万円が贈られた。

優勝したファイヤーサンダーのコメント、プロフィール等は以下の通り。

ファイヤーサンダー（藤田崇之・崎山祐）は、藤田が大阪府茨木市、崎山が和歌山県日高町の出身。NSC（よしもと総合芸能学院）大阪校の同期（34期生）で、2014年にコンビを結成。「コンビを組んだ時からコントをやろう」と決意したが、「大阪のコント師は、4回売れないといけないみたいな話を聞いたことがありまして。コントで売れて、そのあとに人で売れて、東京に行ってコントで売れて、人で売れてと。その4回のうち2回をはぶくために」2015年秋に上京。1年間のフリーを経て、2016年に現在のワタナベエンターテインメントに所属し、東京を中心に活動している。
ともに関西出身で、デビューは大阪からスタートしたとあって、「ABCお笑いグランプリ」の優勝で、まさに錦を飾る形となった。

藤田は「大阪時代から、『ABCお笑いグランプリ』はずっと見ていた大会なので、そこで優勝できたのは本当に嬉しいです。でも、今まで東京勢で優勝した方はいないので、僕らでいいのかなっていう部分はありますね」と言いつつ、「相方はすごい厳しいヤツなんで、仲が悪いんですけど（笑）、今日は本当にありがとうって言いたいですね」と相方への感謝の言葉を口にした。
片や、崎山は「今日出てた、『さや香』の新山と元々コンビを組んでまして。あいつが去年、先にM－1の決勝に行って、その時はすごい悔しかったんで、そういう意味でも嬉しいですね」。そして、2人は「ワタナベエンターテインメントで、大きな賞レースで優勝したのは僕らが初めて。途中から拾ってくれたワタナベエンターテインメントに恩返しできて嬉しいです」と声を揃えた。

さらに、意外な事実も発覚！藤田は「僕の母方のいとこが、『さらば青春の光』の東ブクロなんです。“さらば”も、ABCで2位になってるんですけど、キングオブコントの決勝でも優勝がなくて。我が一族に優勝盾を持って返れるのは嬉しいです。いとこに自慢してやろうと思います」。実は、彼と東ブクロの実家とは200mほどの距離にあり、小・中も一緒だったとか。しかし、「僕は結構、ひょうきんな方だったんですけど、いとこはメチャクチャ暗くて、高校デビューだったんです。だから、いとこがお笑い芸人をやるってなった時は、みんなびっくりしました」と暴露し、「いとこに憧れて芸人になったって言ってる時もあるんですけど、本当はいとこがイケるんなら、俺もイケるなって、ちょっと思っちゃって」と明かした。
また、本大会の最終予選の前日に北大阪を震源とする地震が発生。実家が茨木市にある藤田は「実家のすぐ近くが震源地で。実家は大丈夫かという気持ちと、予選に行っていいのかという気持ちもあったんですけど、何とか頑張りました」と当時の心境も吐露。

そんなファイヤーサンダーのコントは、すべて崎山が書いている。今回の戦略を聞くと「自分たちが面白いと思う、強いネタ2本というだけですね」と自信に満ちた答えが返ってきた。
最後に、賞金100万円の使い道をたずねると、崎山は「普通にリアルに両親にあげるのと、パソコンを買うっていうのと、あとは貯金ですね」。藤田は「僕はガソリンスタンドでバイトしてるんですけど、46歳の先輩のお父さんに吉野家の牛丼をおごってもらってるんで、その分は“お父さん”におごろうと思ってます（笑）」。