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宗教2世は「ため息をつきながら、必死に前を向く」 幼少期にむち打ち、部活には入らず…脱会後に気付いた自分の”非常識”

02/26 16:55 配信

「死ぬまで宗教2世であることに変わりないです」

淡々と自身の思いを話す、夏野ななさん(仮名)。

宗教団体「エホバの証人」を信仰する家族の元で育った、いわゆる”宗教2世”です。教団の信仰を曲解したことによる虐待や、学業への影響。今も後遺症に悩まされているといいます。

22日、滋賀県の龍谷大学瀬田キャンパスで開かれた福祉や教育に携わる人たちに向けたセミナーに、夏野さんら5人の宗教2世が参加し、自身の経験を話しました。

安倍元総理の銃撃事件をきっかけに注目されることになった”宗教2世”の境遇。報道されることも少なくなってきた今、セミナーを企画した猪瀬優理教授は、継続して伝え続ける必要があるといいます。

(猪瀬教授)「この問題が広まったきっかけは事件ですが、その本質はずっと前、明治時代の社会のあり方の組み直しによる”歪み”が現れたものです。この国の親権が強すぎて、子どもの権利が守られない。(宗教2世の問題を考えることは)その仕組み自体を問い直すことにつながります」

■8割以上が幼少期に”むち打ち”を経験

宗教2世の問題に取り組む弁護団がエホバの証人の2世らに実施した調査では、8割以上の人が幼少期にむち打ちをされた経験があると回答。さらに家族の信仰を理由にPTSDなどの精神疾患の診断を受けた人はおよそ3割、辛い経験のフラッシュバックがあったと答えた人は6割にのぼるなど、家族の信仰が子どもの人生に少なくない影響を与えていることが分かっています。

■聖書の拡大解釈で騎馬戦に参加できず

今回セミナーに登壇した2世たちも、家族の信仰により大きな影響を受けてきました。

○Willさん(西日本 50代男性・仮名)
同じく2世の女性と結婚し、一時は親子4代で信者だった時期もあったものの、最近脱会しました。息子から「エホバの証人を辞めたい」と言われたことをきっかけに家族全員で脱会することを決めました。

今振り返ると、宗教を理由に様々な場面で人生が制限されていたことに気付いたといいます。

聖書の「戦いを学ばない」という文言を拡大解釈したルールによって、運動会の騎馬戦に参加できなかったことや、教団の活動に時間を割くために定時制の高校に入学するなど、信仰を理由に様々な学業の制約を受けてきました。「どうせハルマゲドン(エホバの証人の教理”神との最終戦争”)が起きるから」と、現実的な未来を考えることもできませんでした。

(Willさん)「エホバの証人の信者は、親も子も虐待の加害者や被害者になっているとは夢にも思っていない。神の意志でそうしていると思っている。もっと早く気付いたら未来設計をすることができた」

■「心のきれいな人ではないとハルマゲドンで生き残れない」

○ひとみさん(関西 50代女性・仮名)
母親がエホバの証人の信者だったことから、幼少期から信者に。子育ての悩みを相談したことをきっかけに入信したという母親は、父親がいないところでひとみさんをベルトで何度も叩いたといいます。

母親は「心のきれいな人ではないとハルマゲドンで生き残れない」「あなたの命がかかっている」と、ひとみさんへの虐待をしつけだと考えていたようです。

学校では「悪魔の影響を受けないため」に部活には入らず、テレビも見られないため、同級生と共通の話題もなく、一時登校拒否の状態になりました。

同じく2世の夫と結婚し、今思春期を迎えた3人の子どもがいます。

親になってからは、子どもたちには自分の意思で決めさせたいと考え、7年前に脱会。憧れだった医療の世界で働くようになりました。同世代の職員はすでに管理職になっていることや、自身が世間の常識を知らないことに気付かされたといいます。

(ひとみさん)「宗教から自由になってもあらゆるものが圧倒的に欠如している自分にため息をつきながら、必死に前を向いているのが宗教2世なんです」

■教団活動で2年ごとに引っ越し

○阿久さん(40代男性・仮名)
両親がエホバの証人の信者で、教団の活動のために、2年ごとに引っ越しを繰り返しました。中学生の頃にはエホバの証人を辞めたいと親と衝突したこともあるといいますが、その後大人になっても信仰は続きました。結婚し、子育てについて考えたことをきっかけに、自身の本当の気持ちに気付いたといいます。

阿久さん「同じ境遇にいる子どもが、見えないところにたくさん存在している。目を向けていただきたい」

■「まず当事者の話を聴くことが必要」

それぞれの2世らの話を聞いたあと、参加したソーシャルワーカーの女性は「個人が気にかけるということでは限界がある。何かそういう仕組みが必要なのではないか」と話しました。

セミナーを企画した猪瀬教授も、福祉や教育に携わる人たちにもっと宗教2世への理解を深めてもらい、今苦しんでいる子どもたちへを支援することの必要性を感じています。

(猪瀬教授)「宗教2世含め、様々な問題を抱える人を押さえつけようとするのはなく、まず当事者を見て話を聴くというアプローチが必要なのではないかと思っています」

新興宗教の2世の苦悩は広く知られるようになりました。

一方で、それ以外にも、誤った医療の情報や陰謀論、スピリチュアルなど、今の親世代には様々な情報がSNSで広がりやすくなっています。親の信じるものによって人知れず葛藤を抱える子どもたちにとって、宗教2世の経験は「自分は悪くない」と気付くきっかけになるのかもしれません。

最終更新:02/26 16:55

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