Project Story
STORY.02

キーマンが語る
M-1グランプリ

初開催から20年が経ち、今や年末の風物詩として全国区の知名度を誇るお化けコンテンツへと成長したM-1グランプリ。その2021年大会を、数百名を超えるスタッフの司令塔である「総合演出」と、巧みな映像切り替えで生放送を盛り上げる「スイッチャー」として支えたふたりが、再び顔を揃えました。「すべてはM-1のために」と情熱を灯すふたりの対談、必見です。

総合演出

白石 和也

2008 年入社・制作部配属。M-1グランプリディレクターを経て、2020・2021で総合演出を担当。現在は新規事業開発を手掛ける朝日放送グループホールディングス(株)東京経営企画部へ。

スイッチャー

川本 龍文

1999 年入社・技術局放送運用センター配属。2001年に技術局制作技術センターへ異動。M-1グランプリが復活した2015年よりスイッチャーを担当。現在は技術局制作技術部と(株)アイネックス兼務。

01

M-1グランプリのスタッフって、どんな人?

白石

川本さんとの付き合いは『M-1グランプリ(以下、M-1)』に携わる以前からです。漫才コンテストでいえば、『ABCお笑いグランプリ』でも一緒にやりましたね。川本さんはいつからM-1に関わっているんですか?

川本

2010年に一度休止する前からですね。ただ、決勝戦の生放送に携わることはできなくて、ずっとそこに憧れを持ったまま休止してしまいました。当時は、大きな目標にしていたものが消えてしまったような寂しさを感じました。

白石

復活するのが、2015年でしたね。

川本

それで、もう一度心に火がつきました(笑)。実力も、実績も、M-1スタッフに相応しいと認めてもらえるように、がむしゃらに頑張りましたね。生放送でどの映像を流すか決めるスイッチャーとして声をかけてもらえたときは、本当に嬉しかったです。

白石

僕は、M-1復活2年目の2016年にはじめて参加しました。当時の総合演出の下についてVTRをつくったり、フロアでカンペを出したりしていました。総合演出を任せてもらえるようになったのは、2020年からです。川本さんと同じように、僕にとってもやはりM-1に関われるというのは特別なものだったから嬉しかったですね。
M-1のスタッフって、言うなればABCのオールスターのようなもの。制作・技術・美術・CG など、各部署からエースが集まってきて、ひとつのお祭りを作り上げます。そのメンバーに入るのは、やはり名誉なことだと思うし、やっていてもすごく楽しいです。

川本

M-1って、業界としての注目度も高いコンテンツなんです。全国の業界関係者がその年のM-1をチェックしていますし、ライバル視と期待のどちらもされている。それに応えたいから、制作する自分たちもベストの布陣で臨みます。これからABCの仲間になる皆さんも、そのメンバーに入ることを目標にしてほしいですね。

02

知られざる「総合演出」の仕事。

白石

そんなふうに絶対的に信頼できるスタッフが集まっているから、総合演出としても安心して無茶が言えます(笑)。M-1の制作がはじまるのは、毎年9月頃。その最初の会議で、大きな風呂敷を広げるのが総合演出の仕事だと思っています。

川本

技術スタッフとしては、白石さん(総合演出)が大きな目標を示してくれるから、ついていけるというのはありますよ(笑)。

白石

たとえば、コロナ禍にある日本中に元気を届けたくて全国で花火を打ち上げてそれを中継したいと言ってみたり、テレビの前の人たちにも会場にいるような気分を味わってほしくて六本木の空にドローンを飛ばしてそのままスタジオの中に入れないかと相談したり。どれも難しいことはわかっているけれど、みんなが持つ技術とM-1への愛を信頼しているから言えることではあります。

川本

もちろん全部が全部、そのまま実現できるわけではないですし、つまらないアイデアなら「できない」と断ります。だけど、聞くとどれも「実現できたら面白いだろうな」と思わせてくれるものばかり。なんとかやれないものだろうかと考えさせてくれるんですよね。それは協力してくれるパートナーの技術会社さんも同じ。その年のM-1のために、こっそり別の番組で新しい技術を試してきてくれたりもしています。ありがたいし、M-1への愛は本当に全員が深いものを持っていると思います。

白石

M-1は「芸人さんファースト」という伝統は守りながら、常に進化していかないといけないものだと思っています。生放送でやるにはリスクが高いこともたくさんありますし、リハーサルでうまくいかないことも度々……。

川本

2021は審査員の登場の仕方を大きく変えましたね。

白石

これまではひとりずつ呼び込むスタイルだったのが、会場のボルテージを一気に上げようと、映像とシンクロさせながら7人が一斉に現れる演出にしました。それが、リハーサルでは驚くほどうまくいかず、本当にどうしようかと……(笑)。まったく動じていない川本さんに救われました。

川本

代役を立てるリハーサルは、うまくいかなくて当たり前なんですよ。あくまでも技術的な確認をしたり、課題を見つけるためのもの。本番で本当の審査員の人たちが立てば、必ず良いものになるに決まっています。だから、自分は比較的安心して見ていましたね。

03

賞レースならではのこだわりは、スイッチングにも。

白石

本番中は、「サブ」と呼ばれるコントロールルームから指示を出したりしています。そこには20台ほどの生中継の映像が届き、スイッチャーの川本さんがそれらを瞬時の判断で切り替えながら放送しています。僕の席は、その川本さんの隣。毎年、神技を見せていただいています。

川本

一組目のネタがはじまって以降は、舞台上の漫才を引き立てることに集中しています。M-1はバラエティ番組ではなく、その日舞台上で繰り広げられる漫才の面白さを競い合う賞レース。映像的に映えるからといって、漫才中に笑っているお客さんの顔を挟んだりすることは絶対にしません。だから、審査員や今田耕司さん、上戸彩さんの顔も、ここぞという場面だけ。バランスを意識することで、緊張感とエンターテイメント性が高まると考えています。

白石

画面の切り替えと漫才のテンポが合うと気持ちよさそうに感じるけれど、合いすぎると逆にあらかじめ台本があるかのような予定調和になって面白さが半減するんですよね。そのぎりぎりを狙うのが……、川本さんの「遅れスイッチ」!

川本

決勝に上がってきたコンビの持ちネタはほとんど把握しています。だからネタに合わせた切り替えをしようと思えばできるけど、あえてスイッチを押すのを一拍遅らせたりすることで、より一層臨場感を高められます。

白石

それも人生をかけてマイクの前に立っている芸人さんたちを引き立てたいからですよね。生放送で迷ったり、後悔したりすることってないんですか?

川本

切り替えの判断は一瞬でしているけれど、ゾーンに入っているときは不思議と一瞬一瞬がゆっくりに感じられるんです。瞬間的に切り替えてはいるんだけれど、何も考えずにスイッチを押していることはありません。その時々で一番いいと思える理由があって切り替えているから、放送後に「あっちの方がよかったかも」と反省することはあっても、あくまでも結果論。後悔することはないですね。

04

M-1グランプリが見つめる未来。

川本

芸人さんたちと同じように、自分たちABCの技術スタッフも、毎年M-1に向けて一年を過ごしています。今年のM-1に自分が携わるために、成功をさせるために、日々の仕事に取り組んでいるような感覚かな?すべてはM-1のためと言っても過言じゃないと思います。

白石

M-1って、僕にとっては化け物みたいな存在です。自分自身も相当の覚悟を持って臨まないと飲み込まれてしまう。年々話題性も高まっていて、少し怖くなる時もあります。

川本

それだけの存在になれたのは、携わる全員が、M-1というものに真剣に向き合っているからでしょうね。だからその年ごとに、忘れられないドラマが生まれる。2020のアバン(=オープニング前のダイジェスト映像)で、いろいろな芸人さんがマスクを外して舞台に出ていく姿をつないだシーンは、本番中に泣きそうになりました。M-1や漫才に賭けるすべてのひとたちの覚悟が凝縮されているようでした。

白石

コロナが流行して、社会全体に息苦しさもある中で、それでも人を笑わせることに命をかけている人たちがいるんだってことを伝えたかったんです。芸人さんだけでなく、自分たちも同じ気持ちだし、これからも世の中を笑わせる、元気にする存在になれたらいいですね。M-1の目標は、打倒紅白歌合戦です。年末の風物詩、国民的行事にしたいし、そう遠くない未来に必ず実現できると思っています。

川本

今年のM-1の制作も、いよいよはじまりますね(注:取材時は2022年9月初旬)。総合演出も白石から新しい人間に引き継がれたし、審査員の顔ぶれ含めていろいろと変化があるかもしれません。M-1グランプリ2021がとても完成度が高い大会になった分、それをどう超えて、新しいM-1が生まれるのか、とても楽しみにしています。

白石

M-1の仕事って、楽しすぎて中毒性があるんです。ずっとやっていたいけど、ハマりすぎてそこから帰ってこられなくなる怖さがあるくらいの存在。もちろん離れることに寂しさもあるけれど、久しぶりに現場から離れて観るM-1にとても期待しています!

05

学生へのメッセージ

白石

表現することを、一生の生業に。
自分のやりたいことを表現して、それが生業になる。しかも、ひとりでやるのではなく、何十人、何百人の人たちと協力しながらひとつの作品を完成させていく。それはテレビ局で働かなければ、なかなかできないことだと思います。ABCはアイデアがあればなんでも面白がってやらせてもらえる珍しいテレビ局です。もちろん自分でやらなければいけないけれど、チャレンジ精神があるなら応援してもらえます。もちろん、熱い先輩もたくさんいます。好きなこと、やりたいことがある人には最高の職場ですよ!

川本

誰もがM-1に関われるチャンスがある。
M-1グランプリの会場には、あらゆる場所で素晴らしい表情が生まれています。カメラマンもいい画をたくさん撮ってくれています。だけどそのすべてをテレビ画面に届けることはできません。それを、スイッチャーである自分が現場の空気を感じ取りながら、チョイスしていく。それが評価されると、とても嬉しいし、冥利に尽きますね。M-1には制作や技術職以外にも、あらゆる職種のスタッフが携わっています。諦めなければ、必ず関わることができるはず。皆さんと一緒にM-1を作れることを楽しみにしています!

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