スタッフブログ

今なら差し詰め、『レジェンド』、ですか。

劇団Patch第4回公演『破壊ランナー』、ABCホールでまもなくです。3月6日(木)から9日(日)まで、全6公演。すでにSOLD OUTの回もいくつかあるようです。お急ぎください■実はこの週、つまり3月の2回目の週末に向けての数日間、大阪では注目の演劇公演がたくさんあって困るのです。Patchの他に主だったものとしては、メイシアタープロデュース『グッド・バイ』(3/6-9)、近鉄アート館"復活"オープニングシリーズ『一郎ちゃんがいく。』(3/5-9)、キューブ『PACO』(3/6-9・シアター・ドラマシティ)、MONO『のぞき穴、哀愁』(3/6-12・HEP HALL)・・・その他にも多数。うーむ。どうしてこう集中するかなあ。一郎ちゃん、PACO、破壊ランナーはいずれも"伝説の"という枕詞がつく名作です。熟練の劇団メンバーに新進女優がぶつかるMONOの新作も、太宰の未完の遺作を山崎彬が舞台化するグッド・バイも無論はずせない。

■さてそんな中先日、僕は『破壊ランナー』の稽古場見学をして参りました。惑星ピスタチオ、"伝説の"代表作。ピスタチオは1989年結成、1990年に旗揚げ公演を行い、2000年に解散。わかりやすい。文字通り、90年代を駆け抜けた"伝説の"劇団です。ピーク時の動員は20000人に達したと云われ、これは夢の遊眠社や第三舞台などにも全く引けを取らない数字です■てなことを知った風に書いていますが、僕、実はピスタチオの生の舞台を観たことがありません。90年代というのは僕の30代後半から40代前半にあたりまして、これは一般に働き盛り、または働かされ盛りというやつで、僕の場合も例外ではなく、毎晩遅くまで仕事して休日は家で寝るだけ。TV番組を通じてPiperの黎明期に関わったり、東京から来た遊眠社などを観に行く以外、あまり劇場に足を運ばない生活を送っていたのです。最近は休みの日なんぞ、1時間ほど自転車漕いで町の反対側にある小さな小屋に出かけたりしますから、今の方がよほど元気です。あーしかし年のせいか自分語りが長くなる。いかんいかん。『破壊ランナー』の話■今回、うちのホールで公演があり、またラジオで紹介させていただくにあたって、惑星ピスタチオが上演した本作の映像(1995版)を初めて見せていただいたのですが・・・いや何というか、これは演劇というより別の何かですね。いや演劇は演劇なんだけど、表現方法が他の集団のそれと比べてあまりに特異です。無論いい意味でです。目的を達成するための方法論が実に明確だと感じました■目的とは私見ですが恐らく、これまでの演劇にないスピード感、同時代性、ダイナミックな視覚効果、です。そして恐らくこれらの実現のために編み出されたのが、以下のようなピスタチオ独自の演出技法です■①1人の俳優が複数の役を演じるお芝居はよくありますが、その極端な手法として、主役脇役問わず全ての俳優が舞台上で役柄を瞬時にチェンジして何人もの別の人物を演じる、『スイッチプレイ』。②機関銃のように繰り出される説明台詞、擬音語、擬態語と漫画的マイムで状況を実演する、『パワーマイム』。③俳優が素早くスムーズな移動で位置関係を変化させ、ロングからアップへ、縦ショットから横ショットへ、など、観客にまるで様々なアングルで撮影された映像を観ているように感じさせてしまう、『カメラワーク』■・・・これらはかつて、惑星ピスタチオの座付作家・演出家だった西田シャトナー氏と劇団メンバーの研究で編み出されたものです。今回Patch版『破壊ランナー』の潤色・演出を務めるご存知末満健一氏も、当時メンバーとして体験しています。勿論、シャトナー演出完コピ、などということを末満氏が試みる筈もなく、出演者や時代の変化に合わせた末満流の改変が加えられているのですが、彼が正統を継ぐ者であることは間違いない。そして更に注目すべきことに、今公演には惑星ピスタチオ全盛期を支えた2人の俳優、保村大和さん、遠坂百合子さんが参加するのです。かつてのファンには堪らない趣向ではないでしょうか■出演する俳優は、Patchメンバー11人に加え、保村、遠坂、そして山浦徹さんという3人のゲスト、全部で14人です。しかし、劇中に登場するキャラクターは、正確には誰にも分からないと思いますが恐らく100人以上。つまり、スイッチプレイ全開モードです!ひとたび芝居が始まったら、俳優たち各々が、数え切れないキャラクターを切れ目なく演じ分けねばなりません。暗転も、衣装替えもなく、舞台上を常にカメラの代わりに駆けずり回りながら!・・・わ。大変そう■そうでなくてもですね、この『破壊ランナー』、元々が大変な運動量の芝居なのです。何せ、生身の人間が音速の1.7倍、F1マシンの十倍近い速さで走るという。そんな未来のスポーツ『ソニック・ラン』に命を懸ける男たちの戦いの物語なんですから。超音速で走ることを体得した人類、そのフォームとは一体どんなものなのか?もちろん実際に走るわけにはいかないのでソニック・ランのフォームを表現するカッコイイ動きがあるんですが、これが滅茶苦茶俳優の体を酷使する。前屈みに姿勢を低くし、摺り足で、後方に大きく蹴るように片足を延ばす。元に戻して今度は反対の足・・・言葉で書くとこんな感じかなと思うのですが、想像以上に大変らしいです■『OLIVER BOYS』、『岩窟少年』、『白浪クインテット』と、これまでの3回の本公演、全く趣向の異なる演劇作品に挑戦してきた劇団Patchですが、今回が、肉体的には間違いなく断トツハードでしょう。ま、若いのだから今が頑張り時だよね、とおじさんは無責任に楽しませていただきます■しつこいですがチケットまだの方はお早めに!(艦長)

■そうそう、今朝の朝ドラ「ごちそうさん」に楠見薫さんが出演されていました。劇団Patchの中山君演じる諸岡弘士のお母さん役で。楠見さんのダンナ様は後藤ひろひと氏(上記、爆笑&号泣の名作「PACO」の作者)なので、つまり、大王と中山君は義理の?父子だったというわけです。

各ページに記載している内容は、掲載時点のものです。消費税率移行に伴う価格変更等についてご留意下さい。
バックナンバー
前の月 2014年02月 次の月
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28