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2014年9月18日

スクエア、あす初日!

■スクエアの皆さん、今朝小屋入りされ、明日初日です■今回上演されるのは『ひかげの軍団』。実はこの作品は、2006年、朝日放送創立55周年記念事業の一環として開催された「中之島演劇祭2006」で初めて上演されました。この演劇祭は、現在のABCホールがある場所から見て堂島川の対岸、大阪市北区中之島4丁目に大阪市が所有する、"新美術館建設予定地"をお借りして開催されました。何もない地べたに約450人収容の仮設劇場を2つ作り、15日間にわたって8つの団体が劇を次々と上演するという、画期的というか無謀な催しでした。僕・艦長も企画者の一人だったのですが、相当な赤字が出たと聞いています。何せ半月間の催しのために劇場を2軒建てたんですから。日本経済がリーマンショックに襲われる直前で、放送局も今と比べればまだ鷹揚だったのかなあ■というわけで、この『ひかげの軍団』は僕にとっても思い出深い作品です。いわゆる"小劇場"に比べると大きな会場で上演するべく構想されているので、スクエアのお芝居としては、セットや動きが大ぶりです。といっても歌ったり踊ったりはなくて、立ち回りですね。間抜けな忍術とチャンバラで笑わせる。こういうドタバタアクションギャグというのは、コメディ専門集団・スクエアの作品においても珍しいのではないかと思います■そしてもうひとつの特徴は、この劇団お得意の"バックステージ(舞台裏)もの"であること。代表作のひとつ「ラブコメ」シリーズ然り、前回公演の「アベノ座の怪人たち」然り、彼らは、芝居者の物語を作るのがとりわけ巧い芝居者なのです  ■劇中演じられる時代劇のタイトルは「日影の軍団」ですが、もちろんこれは、あの千葉真一率いるJACの面々が中心となって今から30年ほど前に作られていたテレビ時代劇「影の軍団」シリーズが下敷きになっています。そして、今回の作品そのもののタイトルは、『ひかげの軍団』。漢字にすれば「日陰の軍団」です。芸が細かい。『影』は、光が物体に遮られて地面などに出来る輪郭のくっきりした黒い部分で、「影の実力者」などと、"表面には出ないが実際には大きな力を持った存在"という意味に使われます。対して『陰』は、"光の当たらない暗い部分"。『影』と『陰』では大違い。この日本語の面白さにすっと目が行くところがスクエアのセンスの良さです■様々な事情を抱えた4人の男優が、閉鎖寸前のテーマパークで上演される忍者活劇に取り組む。しかし、開幕直前に降りかかるいくつもの問題。...すでに面白いコメディが出来上がる要素はすべて備わっています。しかし爆笑に次ぐ爆笑の中、この作品が終盤、深い共感で観客の胸をいっぱいにするのは、劇中の千早赤阪歴史村の4人の役者たちの生き様が、スクエアの4人の役者の姿にオーバーラップするからにほかなりません    ■無論スクエアは関西演劇界で確固たる地位を占めています。何たって先述の「中之島演劇祭2006」にも、さらには、ABCホールこけら落しの「中之島演劇祭2008」にも出ていただいているのです。でも、やっぱり演劇を、劇団を続けていくということは大変なことだと思います。それでもなぜ彼らは、そして自分たちは芝居を続けるのか...?この問いに答えるかのような、猿飛佐助と服部半蔵の終幕近くの台詞は、滂沱の涙を誘いかねません。スクエアはそんなクサイ演出、きっとしないと思いますが■つまり、『ひかげの軍団』は、≪軍団を描く劇団を劇団が描く≫、という多分にメタな(自己言及的な)構造を持っているわけですが、メタな部分がもうひとつあることをどうしても申し上げておかねばなりません ひかげ.jpg■8年前、「中之島演劇祭2006」における初演の時、初日の本番数分前の楽屋で細部の演出についてあーだこーだ云っているスクエアの姿を僕は目撃しました。今回は再演だしそんなことはないはず。...と思いつつ、先日僕はラジオの取材と称して稽古場にちよっとお邪魔したのです■訥々としながらも実に深みのある上田さんの演出作家である森澤さんのシャープな意見表明、北村さんと山本さんの役への丁寧なアプローチ...。長年育まれた親しさの中にも敬意を失わない、4人の絶妙な人間関係の中で練習が進みます。しかし、様々なベクトルが交錯して、ひとつのシーンが出来上がっていくのにやはり相当の時間を要します。断言しておきますが、この作業がスクエアのコメディの質を支えているのです。しかし、遅い!これでは、初日の幕開けだというのに全然芝居が出来上がらない作中の4人と一緒です。そんなとこまで真似しなくていいのに!ではありますが、そんなこんなを全部含めて、スクエアなんですよね■とにかく『ひかげの軍団』に関しては、「爆笑と感動」みたいなありきたりな謳い文句が決して誇張ではないことを僕が保証します。歴史の波に揉まれる間抜けな忍びの衆と、演劇界で奮闘を続ける役者衆の姿を是非観に来てください。お待ちしています!■以上、先日スクエアのブログに投稿した拙文を、お許しを得た上でほぼコピペさせていただきましたm(_ _)m (艦長)

 

スクエア傑作リバイバル『ひかげの軍団』 

         作・森澤匡晴  演出・上田一軒

 

9月19日(金)     19:00

  20日(土) 14:00 19:00

  21日(日) 12:00 16:00

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