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2011年7月13日

七月の憂鬱

■毎年今頃になると、TVのニュースを見ていて憂鬱になることがあります。原因は、「ほ」と「ぼ」の違いです■関西のローカルニュースで、この季節の大定番といえば京都の祗園祭の話題です。7月頭から月末まで、様々な神事が行われる大規模なお祭りですが、何といってもクライマックスは、7月17日、合計32の山と鉾が京都の町の中心部を行進する『山鉾巡行』。日本中のあらゆる祭の中でも、屈指の有名行事といってよいでしょう■ところがこの『山鉾巡行』の読み方が、実は一定していない。テレビやラジオのニュースでもまちまちなのです。放送局によって長年の間に定まった方針があるようで、たとえば、NHKは『やまほこじゅんこう』、朝日放送は『やまぼこじゅんこう』。「ほ」と「ぼ」の勢力は拮抗している感じです。ちょっと不思議なのは、朝日新聞では記事中わざわざ、『山鉾(やまほこ)巡行』と読み仮名を振っていることです■代表的な国語辞書である広辞苑を引いてみると、「やまぼこ」という項目しか存在しません。また、「山」の項を引くと、後ろのほうに「山鉾(やまぼこ)の略」と書いてあります。しかし後述する理由から、この件に関しては広辞苑は結構アバウトであると思われます■以下は個人的な見解です■日本語には連濁といって、複合語の後の部分に、カ行・サ行など濁点がつけられる文字で始まる言葉が来るとき、濁ることがあります。「草」と「花」で「くさばな」、「山」と「小屋」で「やまごや」などですね。山鉾が「やまぼこ」になるとすればこのためです。しかし連濁にはルールがあって、前の語が後の語を修飾していなければならないのです。「草に咲く花」、「山に建てられた小屋」のように。ところが、少なくとも京都・祗園祭の山鉾巡行における「山鉾」とは、「山のような鉾」ではありません。山と鉾は明確に区別された別物です。現在、山が23基、鉾は9基、鉾の方が大型で、天に向ってそびえる飾りがある。だから「山鉾」は「山と鉾」という同格的な表現で、連濁は起こらないはずです。よく、「山鉾が『やまほこ』なら、蒲鉾は『かまほこ』かい?」なんて云う人がいますが、関係ありません■要するに、こと京都の祗園祭に限って云えば、『やまほこ巡行』が妥当なんじゃないのかなあ、と、僕は考えるのです。実は、だいぶ前に当社のアナウンス部幹部とちょっとだけ議論したのですが、聞き入れてもらえませんでした(笑)■では、肝心のお祭りの当事者はどう考えておられるのでしょう?・・・実はこれが大変複雑なようで、『特にどちらとは決めていない』ようです。祗園祭は何百年もの間、京都の町衆がボランティア精神で支えてきた祭りです。各町内で昔から慣わしとなっている呼び名があり、今更それを上から統一することは困難なのではないか、と推察します。それはそれで立派な姿勢だと思います■さて、大変おめでたいことなのですが、一昨年この行事がユネスコの無形文化遺産に登録されたそうです。ついては、公式に英文表記をする必要が発生し、これについては一応、『Yamahoko』とすることでまとまったとのこと■ふう、難しい...(艦長)

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