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2010年9月 4日

雑誌を読む

■昨日会社でずっと書き物をしていて、ふと机の引き出しの奥にしまってある古い雑誌を取り出して読んでみたんです。雑誌って大体読んだら処分するんだけど、たまにしまいこむのもあって、大抵は気になる芸人さんや演劇人についての特集記事ですね■ある女性月刊誌の1994年5月号。今では旅行とかコスメとかの特集がメインのまあ普通の雑誌になってるけど、当時はこの本、毎号実にエッジの立った特集を組んでカルチャーシーンへの斬り込みがすごかったんです。すでに中年にさしかかったおじさんの僕でしたが、毎月楽しみに買ってましたもん■そういえば80年代から90年代前半は雑誌も面白かったなあ。必ず購読するものだけで十いくつありました■さて、僕がこの号を保存した理由は、松本人志さんとナンシー関さんのかなり長い対談が載ってたから■当時からなかなかメディアで本音をさらすことのなかった松本さんですが、この対談では、とんねるず、ビートたけし、島田紳助、萩本欽一(以上敬称略)など他の芸人さんへの思いをかなりストレートに語っています。ナンシーさんとの信頼関係が胸襟を開かせたのだと思いますが、この時の松本さんの発言は、後にいろんなところで引用されているように思います。強烈なDTビリーバーというわけではない僕ですが、面白いんですよこれが。思わず読み耽ってしまいました■そして夕方に見つけたのが、「シアターガイド」最新号の、つかこうへい追悼特集。つかさんへの追悼文は本当にたくさん目にしましたが、さすが人選・内容とも行き届いた感じです■俳優によるつかさんの思い出話といえば風間杜夫さん、平田満さんが語ることが多いのですが、二人に加えてここには、平田さんの奥さんでつか事務所設立当初からの女優・井上加奈子さんが登場しています。「熱海殺人事件」の婦人警官ハナ子役、「初級革命講座飛龍伝」の嫁役など、70年代の熱狂的つかブームを抑制した演技で静かに支えた女優さんです■そして、「熱海殺人事件」の容疑者・大山金太郎役で、毎回オレンジ色のツナギとサングラス姿でマイウェイを謳い上げながら登場した姿が忘れられない、加藤健一さん。彼は割合早い時期につかさんと離別し、独自の演劇活動を続けておられます。加藤さんの発言で面白かったのは、『自分は今も50%はつかさんの演技論を引きずっていて、そこにスタニスラフスキーをミックスさせている』というところ。口立てなどの手法で役者の内実に合った台詞を作ってくれるつか芝居と、役を徹底的に掘り下げるスタニスラフスキー・システムの融合・・・なるほど。ちょっとだけ距離を置きつつもリスペクトに満ちた素敵な芸談だと感心しました■さらに、元・朝日新聞記者で演劇評論家の扇田昭彦さん。60年代から小劇場演劇にどっぷり浸かり、つか演劇の魅力を最も早く世に広めた方の一人だと思います。扇田さんの文章で、『そう!それを誰か言ってほしかった!』と膝を叩いたのは、『82年に一度演劇活動を休止するまでのつか演劇と、87年に復帰してからのつか演劇は別物』という指摘です■そう!90年代から00年代、それまで演劇と縁が薄かったアイドルやモデル出身のタレントさんたちを次々と舞台に上げ、演技に開眼させてきた後期つかこうへいも確かに素晴らしい■しかし、やはり僕にとっては、学生時代に暗い小さな空間で観た、三浦洋一、平田満、井上加奈子、加藤健一、根岸とし江(現・季衣、以上敬称略)たちが演じる、笑いと怒りと愛と憎しみに満ちた、激しくそして時に情感溢れる芝居がつかこうへいの芝居なんです。でも70年代の舞台はつかさんのこだわりで映像も残ってないし(本当か!?)、追悼企画で流される舞台映像は必然的に後期のものばかり。若い人たちに誤解してほしくないんだよなー・・・って常々悲しくて。でも、僕なんかがこれいうと年寄り臭いんですよ■ほんと、よくぞ書いてくださいました(艦長)

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